「深海のYrr」

深海のYrr 〈上〉  (ハヤカワ文庫 NV シ 25-1)初めての作家の本で、しかもかなりの長編だと、読むかどうかちょっと迷ったりもする。全3巻で1600ページを越えるとなると、気軽に手を出すことがためらわれた。 しかし、読み始めてみたら、なかなかおもしろくて、長さは気にならなかった。 ノルウェー海でメタンハイドレートの層を掘り続ける新種のゴカイが発見されるところから異変が続出する。カナダではホエールウォッチングの船をクジラが襲い、フランスではロブスターに潜む病原体が猛威を振るう。世界各地に猛毒を持ったクラゲが出現、原因不明の海難事故が続発、そして巨大な海底地滑りが発生すると、巨大な津波によりヨーロッパ北部の都市は壊滅してしまう。 次々と襲いかかる異変は、あたかも人類を標的にしているかのようである。 自然を破壊し続けてきた人類に対して自然が「No」と言っているのか? 異常事態を収拾すべく世界中から優秀な科学者が集められるのだが・・・ 事態収拾は困難極まりない。しかも、裏では陰謀が張り巡らされていて、余計に難しくしてくれる。まさしく人類滅亡の危機である。 科学的事情と知識に溢れたストーリーでリアリティに満ちており、荒唐無稽な話には思えない。だから、読んでいて、恐ろしくなってしまう。 同じ地球上にあって深海は、ある意味、宇宙よりも未知の世界である。望遠鏡で遠い宇宙の星を見ることはできるが、深海を見ることはできない。 それゆえ、こんな可能性もありなのか! まったく驚くべきストーリーというほかない。 (ネタバレしないためには、こんな風に書くしかない。)

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