過去の栄光

私の出身高校には「過去の栄光」という言葉があった。 進学校だったため、中学の成績がよかった人が集まってくるのだが、中学の成績がよくても、高校に入れば、ただの人である。(というか、半数は平均以下となるのだが。) それで、中学時代に成績がよかったことを「過去の栄光」と半分冗談を込めて言っていたのである。 さて、ここで中学時代の話をするつもりはない。 私にとって「過去の栄光」と呼べることと言ったら、これしかない。 すなわち、「サブスリー」である。 サブスリーとは、フルマラソンを3時間以内で走ることを言う。 市民ランナーの目標とするところであるが、そう簡単に達成できないからこそ「サブスリー」という言葉には特別なものがある。 「サブスリー」は市民マラソンにとっては勲章のようなものであり、いわゆる一つのステータスでもある。 フルマラソンの他に、ハーフマラソンとか10kmとか30km、はたまた100kmマラソンなどというのもある。ランナーによっても5kmとか10kmといった比較的短い距離を得意とする人もいれば、私のようにスピードはないが、20km以上の距離をじっくり走るのがいいという人もいる。さらに、もっと長いウルトラマラソンが好きな人もいるし、富士登山競走とか長谷川恒男CUPなどといったレースが好きな人もいる。 それぞれのレースで、大きな目標となるようなタイムはあるが、フルマラソンの「サブスリー」に匹敵するようなものは他にない。 青梅マラソンで2時間を切れば「すごい」ことだと思う。 青梅コースは30kmとはいえアップダウンが多いので、平坦なコースの30kmとはわけがちがう。私は平坦なコースでは2時間以内の記録を持っているが、青梅では2時間を切ったことはない。でも、青梅マラソンで2時間切ったというよりも、フルマラソンで3時間を切ったというほうがインパクトがある。 やはり、サブスリーとは特別なモノなのだ。 スポーツによっては「まぐれ」というのもあり得るが、マラソンに関してはまぐれでいい記録は出ない。練習に見合ったタイムでしか走れないのだ。だから、マラソンでいいタイムで走れたら、それが実力で、はっきりと自信を持ってよいことになる。 私は3時間以内でフルマラソンを走ったことが7回ある。 これは実に大したことなのだ。本当に自分で自分をほめていいことである。(実は、高校の体育の授業で3000m走ったとき、いつもクラスで後から数えた方が早かった。) でも、それももう過去の栄光である。 2003年を最後にサブスリーから遠ざかっている。 最近は走ることよりも山のほうがメインになってしまったし、レースにはさほど興味もなくなってしまった。 ちょっと練習した程度ではサブスリーは達成できないから、今後再びサブスリーを達成する可能性は極めて低い。 だから、やっぱり、「過去の栄光」なのである。

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