フルマラソンには35キロの壁と言われるものがある。
30kmあたりまで調子よく走っていても、35キロ以降急激にペースダウンしてしまうというのはよくあることである。
足が重くなって、思うように走れなくなる。そうなるともうペースは落ちるだけで、戻ることはない。
30kmまでのレースなら、前半オーバーペース気味に走っても、後半ちょっとペースダウンする程度で済むが、フルマラソンの場合は極端にペースが落ちてしまう。
しかし、記録が出るようなときは、35km以降もペースが落ちることなく、最後まで走りきってしまう。
同じような練習をしていて、レースでも同じようなペースで走っていっても、その時によって35キロの壁に苦しむこともあれば、壁などまったく感じないままゴールしてしまうこともある。
この差は一体何だろう?
走るためのエネルギーとしては炭水化物と脂肪が使われる。この両方を効率的に使えばいいのだろうが、速く走ると脂肪を燃やすことはなく炭水化物のみをつかってしまうらしい。脂肪を燃やすにはゆっくり走った方がいいらしい。
しかし、レースで自己記録の更新を目指すなら、あまりゆっくり走っていくわけにもいかない。ゴールまで走りきれるかどうかのギリギリのペースを設定して走ることになる。
だから、記録が出るときは最後までペースを落とさず走りきるが、ダメなときは終盤ペースダウンしてしまう。
記録が出るようなときは、最後まで余裕があるから、炭水化物と脂肪の両方をエネルギーとして効率的に使っていたのではないか?
そして、終盤急激にペースダウンしたときは、脂肪を燃やすことができず、ガス欠になってしまったのではないか?
30km以下のレースの場合は、脂肪を燃やさずとも炭水化物だけでゴールできるから極端なペースダウンはない。
実際はこんなに簡単なものではないのかもしれないが、私の実感としては、この説明がしっくり合っているような気がする。
それでは、どのようなペースで走るのがよいのか?
単純に計算して、1kmあたり4分15秒のペース(5kmで21分15秒)で走ると、フルマラソンを2時間59分20秒でゴールできることになる。
終盤ペースダウンすることを想定して、前半少し速いペースで走って貯金していった方がいいという人もいる。
でも、私の走り方はイーブンペースであり、全盛期には自然と5kmあたり21分10秒台のタイムで走っていったものである。中間点の通過タイムはたいがい1時間29分台だった。
調子のいいときは、後半自然とペースが上がって2時間56分台でゴールした。
悪いときは、35km以降急激にペースダウンして、3時間10分以上かかってしまったこともある。
大半のランナーは後半ペースダウンする。
イーブンペースで走り切る人や後半ペースが上がる人など少ないだろう。
後半ペースダウンするから前半に貯金を作っておこうと思うかもしれないが、私の実感では、前半の貯金などほとんど意味がない。
終盤にペースダウンしたら、前半の貯金などあっという間になくなってしまうからである。
前半貯金を作ろうと思うよりも、ギリギリサブスリーのペースに抑えて、少しでも後半に力を温存しておくほうがいい結果につながるというのが私の考えである。
もちろん、これが絶対的に正しいと言うつもりはないし、個人差もあるだろう。
しかし、フルマラソンは終盤の走りによって記録が大きく左右されるものであり、たいていのランナーは終盤ペースダウンしているのだから、できるだけ後半に力を残しておく走り方が有効に思えてならない。