「インシテミル」

インシテミル (文春文庫)アルバイト情報誌に掲載されていた「ある人文学的実験の被験者」の募集。 「時給1120百円」というのを見た誰もが明らかな誤植と思いつつ、応募してみたら、とんでもない実験だった。 「暗鬼館」という閉鎖空間に7日間閉じ込めて、殺人をさせ、犯人捜しをさせるというものである。 一人殺すごとに報酬が2倍になり、正しい犯人を指摘すれば報酬が3倍になる。犯人を間違えれば報酬は減額され、多数決で犯人とされた者は〈監獄〉に送られる。 時給112,000円、期間は7日間で24時間観察されるので、7日間何もなく過ごすだけで18,816,000円もらえる計算になる。 もともと殺人ゲームとわかっていて応募したわけではないし、時給1120百円も絶対に誤植と思っていたのだ。人を殺してまで報酬を増やそうなどと思う人はいない。何もしなくても1800万円ももらえるのだ。危険を冒す必要などまったくない。参加者同士でそういう話がされるのだが・・・ ところが、実際に殺人が起きてしまうので、恐怖のどん底に落とされることになる。 個室に鍵はかからず、しかもドアの開閉や足音も聞こえないつくりになっている。館の中に犯人がいて、それが誰かもわからない。眠っている間に部屋に忍びこまれてもわからない。そんな状況で眠れるわけがない。朝まで一睡もできず、恐怖の夜を過ごすことになる。 ミステリー好きで古今東西のミステリーを読んだ人なら、さらに楽しめるのだが、そんな知識がなくてもまったく問題ない。この夜の恐怖はただごとではない。これはすごい!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください