Amazonの脅威

2010年は電子書籍元年などと言われたが、一年経ってもまだまだという感じだ。 昨年、ついにAmazonが日本での電子書籍販売を開始するというニュースが流れたが、結局、年内開始できずに年を越した。事前にネットで流れた情報によると、Amazonが出版社に送った契約書はAmazonに非常に有利な条件となっていたので、交渉がまとまらなかったようである。これによると、Amazonの取り分は、Amazonが推奨するフォーマットで電子化された書籍で55%、推奨フォーマット以外だと60%だとか。(ドットブック形式やXMDF形式などは60%ということだろう。) また、出版社の全書籍の電子化を求めており、電子書籍として提供されていないタイトルはAmazonが電子書籍を作成して配信できるというものだった。 とても出版社がのめる条件ではないが、この条件で契約したならば、一気に電子書籍が普及することになるだろう。おそらく、現時点では電子書籍に消極的な作家も多いだろうが、そういう作家の本も電子書籍化されることになり、紙の本と同様に電子書籍も販売されることになるのだから。 これは喜ばしいことのように見えるが、心配もある。 Amazonが一人勝ちしてしまうのではないか? 紙の書籍の販売に関しては、すでにAmazonは日本最大のサイトを持っている。これは有利である。もともとAmazonの利用者は多いのだから、これが電子書籍の販売も始めたら、電子書籍の販売サイトとしても最大のサイトとなって、他のサイトは淘汰されてしまうかもしれない。 また、AmazonのKindleがSonyのReaderなどより安い価格で登場すれば、電子書籍リーダーもAmazonの一人勝ちになる可能性がある。AmazonはKindleが原価割れしても電子書籍の販売によって利益が得られるだろうから、戦略的な価格設定は十分にあり得ることである。 その結果、Kindle以外の電子書籍リーダーが衰退してしまう恐れがあり、Readerを使用している私としてはこれが一番怖い。 今までに購入した電子書籍が電子書籍リーダーを変えても読むことができればいいのだが、著作権保護の関係で他の電子書籍リーダーでは読めなくなるものが多いだろう。 Reader Storeで購入した電子書籍はReaderでしか読めない。パソコンでは読めないのだから、他の電子書籍リーダーでは読めないだろう。 将来、ReaderがKindleに駆逐され、ReaderもReader Storeも消滅してしまったら、Reader Storeで購入した電子書籍が読めなくなるのではないか・・・ しかし、PDAbookやビットウェイブックスなどの電子書籍販売サイトで購入した電子書籍はReaderでもパソコンでも読める。他の電子書籍リーダーでも読めるだろう。 他のサイトで販売しているパソコン用の電子書籍もReaderで読めると思っていたら、そうでもないことがわかった。電子文庫パブリなど専用のビューアーをインストールする必要がある場合は、ドットブック形式やXMDF形式だからといってReaderで読むことはできない。 そんなわけで、今のところ、PDAbookやビットウェイブックスで販売している場合は、こちらで購入している。 最近、少しずつ電子書籍が増えてきて、Readerの使用頻度が増えてきた。 Amazonが参入してもReaderが生き残っていてほしいものである。

「丹沢登山百年の歩み」

以前、どこかでこの本のことを読んだ気がしたが、現物を見ることもなかったので、すっかり忘れ去っていた。(あらためて調べてみたところ、神奈川県山岳連盟のサイトに記事があったのでここで見たのだろう。) ところが、先日、思わぬところで、この本をいただき、その内容を知ることができた。 写真家の田中茂さんが編集し、自費出版した本である。 昔の写真や資料が多数掲載されていて参考になるが、それとともに現在の荒廃した丹沢の再生への願いがこめられた本である。 古い写真はそもそも多くは残っていないだろうから、他で見たことのある写真も少なくないが、初めて見る写真も多数に登る。 昭和30年の国体登山部門が丹沢山塊で開催されることによって、登山道が整備され山小屋が建てられて、丹沢が広く知らしめられることになったが、その後のオーバーユースによって急速に荒廃していった。 昭和40年代に登山者が捨てていったゴミの山はすさまじかったようで、ゴミの持ち帰りということに関しては、現在はマナーがよくなったと言える。しかし、その後も荒廃の度合いは進んで行く一方であり、本当にこのままでは危ない。すべての登山者が意識をあらためなければ・・・

電子書籍版「ミレニアム」

12月16日、「ミレニアム」三部作の電子書籍版が発売になった。紙の書籍ではそれぞれ上・下巻に分かれ、全6巻となっていたが、電子書籍版は各巻とも上・下合本であり、各巻とも期間限定特別価格900円(通常1,200円)となっている。紙の本は上・下巻に分けてもけっこうな厚さになるが、電子書籍ではページ数が多くなっても分冊する必要がないわけである。 文庫判では第一部が上・下各840円、第二部が各924円、第三部が各945円だったのが、期間限定とはいえ、上・下合本で各900円(いずれも税込み)というのも安い。 そして、文庫判ではトータルで3,000ページに及び、けっこう場所を取るが、電子書籍の場合は置き場所に困らないのがいい。 文庫判は第一部が9月、第二部が11月、そして第三部は今月上旬に発売になったばかりだった。こんなに早く電子書籍版が出るとわかっていたら、待っていたものを・・・

「ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士」

ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士(上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)「ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士」を読み終えた。「ミレニアム」の第三部は「ミレニアム2 火と戯れる女」のラストからそのまま続いている。 秘密の組織がその秘密を守るために、証拠品を奪い、秘密に関わるメンバーを殺害するなど思い切った行動に出てくる。そして、リスベット・サランデルを精神科病院へ収容すべく画策する。 かつて、秘密の組織によって仕組まれた精神鑑定により精神科病院に収容され、今なお後見人が付けられているリスベットは不利な立場に立たされている。精神科医が秘密の組織と結託しており、裁判でリスベットが精神を病んでいるとされれば、いくらリスベットが真実を証言しても受け入れられないのだ。 リスベットが国家機密の犠牲になってきた事実を知った首相もリスベットを助けることはできない。司法権を侵すことはできないのだ。リスベットが裁判で戦って勝つ以外に方法がない。さもなければ、再び精神科病院に収容されてすべてが闇に葬られることになる。 そして、リスベットの裁判が始まる・・・ 「ミレニアム」三部作を読み終えた。作者のスティーグ・ラーソンは第三部の執筆に入った時点で第五部までのストーリーができあがっており、最終的には十部作とするつもりだったらしい。ところが、第三部を書き上げ、第四部の執筆を開始したところで、第一部の発売を待つことなく心筋梗塞で50歳という若さで死去してしまった。なんとも残念なことである。第四部の原稿が200ページほどパソコンに残っていると言う。はたして、これが将来発表されることがあるかどうかわからない。しかし、読んでみたいな~~~

「インシテミル」

インシテミル (文春文庫)アルバイト情報誌に掲載されていた「ある人文学的実験の被験者」の募集。 「時給1120百円」というのを見た誰もが明らかな誤植と思いつつ、応募してみたら、とんでもない実験だった。 「暗鬼館」という閉鎖空間に7日間閉じ込めて、殺人をさせ、犯人捜しをさせるというものである。 一人殺すごとに報酬が2倍になり、正しい犯人を指摘すれば報酬が3倍になる。犯人を間違えれば報酬は減額され、多数決で犯人とされた者は〈監獄〉に送られる。 時給112,000円、期間は7日間で24時間観察されるので、7日間何もなく過ごすだけで18,816,000円もらえる計算になる。 もともと殺人ゲームとわかっていて応募したわけではないし、時給1120百円も絶対に誤植と思っていたのだ。人を殺してまで報酬を増やそうなどと思う人はいない。何もしなくても1800万円ももらえるのだ。危険を冒す必要などまったくない。参加者同士でそういう話がされるのだが・・・ ところが、実際に殺人が起きてしまうので、恐怖のどん底に落とされることになる。 個室に鍵はかからず、しかもドアの開閉や足音も聞こえないつくりになっている。館の中に犯人がいて、それが誰かもわからない。眠っている間に部屋に忍びこまれてもわからない。そんな状況で眠れるわけがない。朝まで一睡もできず、恐怖の夜を過ごすことになる。 ミステリー好きで古今東西のミステリーを読んだ人なら、さらに楽しめるのだが、そんな知識がなくてもまったく問題ない。この夜の恐怖はただごとではない。これはすごい!