
塔ノ岳山頂

塔ノ岳山頂
自転車競技を扱った小説である。
自転車は団体競技であり、チームのエースを勝たせるためにサポートは自分を犠牲にして働くことになる。エースはサポートを踏み台にして勝ちに行く。それでいて表彰はあくまでも個人であるのが特徴である。
エースの自転車がパンクしたら、サポートは引き返してエースのタイヤ交換を待ち、後れを取ったエースを先頭集団に追いつくように引っ張っていくといったこともあり得る。(もちろん、エースをあきらめてサポートが勝負に出るというのもありだが、どちらが勝つ可能性が大きいかによって判断するのである。)
誰だって自分が勝ちたいと思うものだが、エース以外はエースを勝たせるためにサポートに徹することになる。
さて、主人公のチームのエースは、以前、有望な若手をつぶしたという噂がある。エースの座を守るためにやったのか?
その犠牲者(?)は下半身不随となって選手生命を絶たれていた。
しかし、これに関係して悪辣な罠が仕組まれる。
そして発生した重大事故。
回避不能な罠に対して最良の結果をもたらすべく取った驚くべき行動。普通の人間には絶対にできないことだが、この人は本当に自転車が好きで、チームのことも考えていたのだな・・・この事故の裏に隠された秘密に驚かされた。これは、なかなか・・・
4人組の強盗のお話。成瀬は沈着冷静で、相手が話すことが嘘か本当か正確に見分けることができる人間嘘発見器とも言える人物である。
銀行強盗の正否は警察に通報されないかどうかにかかっている。警察に通報されてしまえば、人質を取って立てこもったところで、結局はつかまってしまうのがオチである。だから、絶対に通報させないようにして強盗を行う。
雪子は自動車の運転担当。銀行まで3人を送り、お金を奪った後は、再び彼女の運転する自動車で逃走する。雪子は正確な体内時計を持っており、時計がなくとも秒単位で時間を計ることができるのが特徴である。銀行に強盗に入ってから出てくるまでの時間が決められているし、事前に何度も逃走経路を走らせて入念に調べており、逃走する際は赤信号で止まることなく自動車を運転して、逃げおおせてしまうというわけである。
久遠は天才的なスリ師である。強盗そのものには直接関係ないが、ちょっと気になる人物がいたりすると、財布をすって何者か知る手掛かりをつかんだりするのである。
響野はとにかく話し好きな男なのだが、この男がはたしている役割がいまいちわからない。他の2人がお金を詰め込んでいる間、この男は銀行員やお客さんたちに演説というかお話をしているのである。
とまあ、現実的な設定ではないが、その分、おかしくて笑えるストーリーである。
「陽気なギャングの日常と襲撃」は続編にあたるが、これまた笑ってしまうようなストーリーである。
発信器を使って誘拐犯の潜むビルに向かったものの、相手につかまってしまい、
「おい、おまえは何しにここに来たんだ。きちんと説明すれば、帰してやる」
「新聞の勧誘に来ただけで」
「何新聞だよ」
「えっと、恐怖新聞です」
即、監禁されてしまうのだった。