MSの陰謀

数年前から職場で「一太郎」が使えなくなって、「Word」を使わざるをえなくなった。 以前はまったく当然のごとく「一太郎」を使っていたのに。 「Word」の使い勝手がいいなら、まあ、しかたがないとあきらめもつくのだが、まったく理不尽とも思える動作をしてくれるから嫌なものである。 最初から「Word」を使っていて「一太郎」を使ったことのない人は不満もなく使っているのだろうが、もともと「一太郎」を使っていた人だと「Word」の理不尽な振る舞いに嫌な思いをしているようである。 「一太郎」ユーザーなら「一太郎」から「Word」へのソフトの変更を望むはずがないから、この変更を仕組んだのは「Word」ユーザーに違いない。 個人レベルならともかく、職場全体で使用するソフトを変更するにはそれだけの説得力のある理由がなければ無理である。 しかし、「一太郎」から「Word」への変更に関しては、お偉いさんを説得できる理由がいくつも考えられる。 まず第一に「Word」ならば新規で購入するパソコンに標準添付されているものが多いことである。しかるに、「一太郎」を使うなら、別途購入しなければならない。 第二に「Word」であれば、「Excel」や「Access」など他のソフトと連携できる点で有利である。実際には、「一太郎」でも問題なくデータのやりとりができるので、必ずしも「Word」でなければならないということはないのだが、同じメーカーで統一したほうが操作の面でも扱いやすいとか言えば、それなりの説得力を発揮するだろう。 そして、第三に「Word」はたいていのパソコンに標準添付されていて、多くの人が使用しているので、ユーザーの少ない「一太郎」を導入するよりもよいといえば、これまた大きな説得力を有してしまうのである。 実際に「Word」も「一太郎」も使わない人なら、費用面のみならず、あらゆる点で「Word」のほうが有利と判断して、「一太郎」から「Word」への変更を認めるだろう。 その結果として、「一太郎」ユーザーは大迷惑を被ることになったわけである。 もちろん、「Word」ユーザーからすれば、「一太郎」が使いづらいと思うかもしれないし、「Word」には「一太郎」よりも優れた点があるのかもしれない。 しかし、これまでいろいろなメーカーのワープロ専用機なども使ってきた経験から言って、「一太郎」よりも「Word」のほうがはるかにとっつきにくい。そして、それ以上に問題なのが、「Word」が理不尽とも思える振る舞いをすることである。 「Word」のデータで送られてきた表に文字を入力するだけならいいのだが、そこに図形で丸を書いたり、矢印を入れたりすると、途端に入力済みの文字列が逃げるように動いてしまったり、図形を動かして位置を調整しようとすると、またまた文字が逃げるように動いてしまうなんてことがある。 まったく理解不能である。 ヘルプをよく調べれば、どこかに解決方法が書いてあるのかもしれない。しかし、基本的なことは直観的に操作できなくては困るのだ。 このように「Word」の理不尽な振る舞いに困惑する人はけっこう多い。 また、日本語入力に「ATOK」が使えなくなるのも痛いことである。 「ATOK」は「一太郎」に標準添付の日本語入力システムで、漢字変換の精度が高く、使い勝手もよい。 「一太郎」が入っていないパソコンの場合は、Windowsに標準添付のIMEを使うことになる。しかし、ただで使える日本語入力システムが「ATOK」にかなうわけがない。 昔は、ソフトは自分で買うものであって、パソコンを買ってもワープロソフトなどついていなかった。PC-9800シリーズなどは、MS-DOS(懐かしい!)すら別途購入しなければならなかった。 ソフトが安くなり、パソコンに標準添付されるのは消費者にとってはありがたいことではあるが、パソコンに添付されているのはマイクロソフトの「オフィス」であって、「一太郎」はついていない。だから、新しくパソコンを始めるほとんどの人は「Word」を使うことになる。(そして、ほとんどバージョンアップはしない。) こうして、「Word」は普及し、「一太郎」は苦境に立たされることになった。 使い勝手の良い優れたソフトが劣ったソフトを駆逐するのは理の当然だが、単にパソコンに標準添付されているというだけの理由で普及したソフトが優れたソフトを駆逐するようなことだけはあってほしくないものである。

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