3日目は聖平小屋泊まりにするか茶臼小屋まで行くか? ちょっと迷った。
聖平小屋までなら楽だが、茶臼小屋までだとかなり長い。茶臼小屋を目指すなら、大沢岳や奥聖岳には寄らずに最短ルートをとったほうがいいと思った。
しかし、アクセス不便なこの地域、今回寄らなければ、次はいつ来られるかわからない。
だったら、やっぱり寄っていこう。その結果、聖平小屋泊まりとなってもいいではないか。余裕があれば茶臼小屋まで行くということにしよう。
小屋で朝食を食べたのは半数程度だった。やっぱり、あとの半分は早出である。だから、朝の食堂は空いていた。
谷間にある百間洞山の家からは日の出は見えない。だから、朝食が済めば出発の準備をするだけである。
5時34分、百間洞山の家を出発。
ここから聖岳へ向かう道は2つある。テント場を通って大沢岳に登っていくコースと大沢岳には登らず、大沢岳と中盛丸山の鞍部を目指す新道の2つである。忠実に稜線を歩いていくなら、大沢岳に登らなければならないが、その場合、コースタイムは40分増となる。だから、多くの人は大沢岳には登らずに新道を行ったようである。でも、私は大沢岳に登る道を選ぶ。
百間洞のテント場を通り、樹林帯を登っていくと、ハイマツ帯になり、ぐんぐん登っていく。大沢岳は2つのピークを持つ双耳峰だが、北側のピークは巻いていく。
大沢岳の山頂は眺めが良く、荒川三山の左には塩見岳や仙丈岳などが眺められた。
大沢岳の山頂で眼鏡ケースを拾った。昨夜、夕食の際に同席したおじさんの忘れ物だった。おじさんは、忘れ物を取りにもう一度大沢岳に登らなければならないと言っていたのだが、朝、大沢岳に直接登るコースではなく、新道を登っていったので、私が拾っていって行き違いになることはないだろうと思った。よく見ると、予期したとおり反対側から登ってくる人が見えた。やっぱりあのおじさんで、大沢岳から下っていくと、眼鏡ケースを手渡した。
聖岳までいくつも山を越えていくので、アップダウンの連続である。
大沢岳の次は中盛丸山で、こちらももちろん展望がよい。
中盛丸山からの下りでライチョウ2羽に会った。
中盛丸山の次は小兎岳で、その次が兎岳である。やっぱり、この山も展望がよい。これから向かう聖岳が大きく見える。
兎岳からは一旦200m下って、400m登り返すことになる。登山道もそれまでよりちょっと険しくなるが、茶臼小屋まで行こうというなら、このあたりで苦しんでいるわけにはいかない。まだまだ前半であり、余裕はあるから、さくさくと歩いていく。
今日も晴れて、日差しが強かったが、風が吹くとけっこうさわやかだった。(昨日の悪沢岳のような強風ではなかった。)
ときどき早出した人を追い抜きながら、たんたんと登っていった。
やがて、前聖岳に到着。これまでの登山道では、ときどき人に会う程度だったが、聖岳の山頂は案外にぎわっていた。
展望はもちろんよくて、赤石岳や今日歩いてきた山々を見渡せた。百間洞山の家も見えた。
ひとしきり写真を撮った後、荷物を置いて、奥聖岳に向かった。高低差はあまりないから、往復したからといって、たいして影響はないはずである。
奥聖岳のあたりのお花畑は、もうほとんど終わっていたが、それでもウサギギクなどがチラホラ咲いていた。
前聖岳に戻ると、砂礫の大斜面をジグザグに下降していく。ジグザグの下りが終わったあたりで、右手の水場でのどを潤す。今回のコースは、アップダウンは多いが、要所要所に水場があるので、水には困ることがない。
やがて、小聖岳に到着。聖平小屋へは、まだまだ下っていかなければならない。
樹林帯に入り、さらに下っていくと、紫色の花(トリカブト)と黄色い花(キオン)がいっぱい咲いていた。
やがて、目の前に平原が開けた。聖平である。この分岐を左に少し行くと、聖平小屋に到着。
聖平小屋でジュースを買い、パンを食べた。(軽い昼食)
聖平小屋の人が「今年一番の晴天」と言っていたが、本当にいい天気だった。
聖平小屋に11時半頃までに着いて、余裕があれば、茶臼小屋へ向かうつもりだったが、実際には10時半過ぎには到着しており、体力的に十分余裕もあったので、まったく問題なく茶臼小屋へ向かうことにした。
トリカブトやキオンが咲く道を、次なる目標である上河内岳目指して歩いていく。オヤマリンドウもあったが、こちらは晴天でもほとんどつぼみのようで花が開かない。
樹林帯を抜けて、南岳へ登っていく際、振り返ると聖岳が大きく見える。下の方には先ほどよってきた聖平小屋も見える。
かなり登って、そろそろ頂上かと思いきや、傾斜はゆるやかになるものの、上河内岳へはさらにまだ登っていく。
上河内岳は縦走路からはちょっとはずれていて、分岐から往復15分程度だから、やっぱり登りたい。たいした距離ではないが、けっこう急な斜面で、ジグザグに登っていく。
上河内岳の山頂も眺めがよい。来た道を振り返れば、聖岳や兎岳、そして赤石岳や悪沢岳も見える。南西方向には茶臼岳〜光岳が見えた。東側は雲がかかっていて富士山は見えなかった。山頂でちょっと休憩してパンを一つ食べた。
分岐まで下ると、茶臼岳を目指す。なだらかな道である。
しばらく歩いていって振り返ってみると、上河内岳もけっこう大きかった。
なだらかな道を歩いていき、やがてトラバース気味に少し登っていくと、茶臼小屋への分岐となる。時間もまだ早いので、小屋へは下りずに茶臼岳へ登っていく。本日最後の登りである。
雲が多くなってきてはいたが、茶臼岳からの眺めもまたよかった。
茶臼岳から引き返して、分岐から右へ下っていくと、やがて茶臼小屋に到着。
小屋の窓からおばさんに「下りるのか?」「テントか?」と聞かれ、小屋に泊まるというと、「どうぞ」と招き入れられた。(マイカー利用者なら下山できたのだろうが、路線バス利用では下山してもバスがないのである。)
受付をして、荷物を置いた後、食堂のほうに下りていくと、お茶とお茶菓子を出してくれた。
南アルプス南部の縦走は、コースも山小屋も限られているから、前の小屋で会った人にまた会うということも少なくない。百間洞山の家で同室だった70歳のおじさんが茶臼小屋までやって来て、また会えたのはちょっと驚きでもあった。明日は光岳へ向かうらしい。私は明日は下山だから、ちょっとうやらましい。
ちなみに、光小屋は、50歳以上で3人以下のグループで15時までに小屋に到着しないと食事は出してもらえないので、茶臼小屋に泊まって往復する人も多いようである。光岳は、マイカー利用なら易老渡から登ることができるが、やっぱり不便な山である。
百間洞山の家のトンカツというのもよかったが、茶臼小屋の夕食にはお刺身が出てきたから驚いた。こちらもなかなかよい食事だった。
消灯は8時だが、その前に寝てしまった。なお、寝具はシュラフのみである。
百間洞山の家(5:34)→大沢岳(6:16-6:23)→中盛丸山(6:43-6:46)→兎岳(7:39-7:44)→前聖岳(8:54)→奥聖岳(9:07)→前聖岳(9:23)→小聖岳(9:55-9:59)→聖平小屋(10:32-10:47)→上河内岳(12:20-12:30)→茶臼岳(13:31-13:35)→茶臼小屋(13:53)