剱岳はカニのたてばい、よこばいなどの難所で渋滞が発生するという。そこで、渋滞回避のためにも朝早く出発することにした。下山後、自宅に帰るのにも時間がかかるので、朝早く出発した方がよい。それで朝食はお弁当にしてもらった。
午前3時を過ぎると、チラホラと起きだして、3時半頃にはけっこう起きていたか。
私は3時50分になって起きて、活動開始。
4時に朝食(お弁当)。食堂(談話室)にはお茶やスープが用意されていたのがありがたかった。その後、歯みがきやトイレなどすませ、出発準備。
ザックは小屋において、必要なものだけアタックザックに入れていく人も多いようだ。が、サブザックを持っていくと、その分に荷物が増えるので、持っていかなかった。一番のお荷物はカメラで、あとは水、行動食など。置いて行くとしたら着替えや雨具やその他の小物類か。全部持っていっても大したことないと判断したのだった。
外に出ると、東の空が明るくなり始めていた。五竜岳や鹿島槍ヶ岳のシルエットがくっきり浮かぶ。
4時40分、剣山荘を出発。すでにヘッドランプなしでも歩けそうな明るさだった。
腰の調子は良くないし、後ろからやって来た人たちには道を譲って、無理せず登る。とはいえ、特段ゆっくり歩いたわけでもないので、抜きつ抜かれつとなった。
一服剱までにクサリ場が2つあったが、クサリをつかまなくても登れるようなところだった。
一服剱まで登ると、見晴らしがよく、日の出も間近だったので、しばらく眺めていた。あいにく雲があって、雲を通して見ることになった。
前剱まではけっこう登っていくことになるが、特段問題箇所はなかった。
前剱に登ると、目の前に剱岳本峰が見える。西側には雲海が広がっていた。
前剱の門の手前あたりからいよいよ本格的になってくる。
4m鉄のブリッジは両側が切れ落ちているから強風時には怖いだろうが、あっさり通過。すぐに5番目のクサリ場となる。
このクサリ場の写真を初めて見た時は、なんて恐ろしい場所だろうと思ったものだが、実際に歩いてみれば、足場は十分余裕があるし、クサリもしっかりしているので、恐怖感を感じることなく、あっさり通過。
前剱の門を過ぎると、いよいよ本峰への登り。
平蔵の頭では登りと下りでルートが分かれており、7番目のクサリを登って反対側に下るのだが、先行者に着いていったら、ちょっと間違えたようで、岩場を下り始めると、右のクサリへ移動しなければならなかった。
平蔵のコルを過ぎると、いよいよ登りの一番の難所、カニのたてばいとなる。
ここではけっこう渋滞も発生するらしいが、早出したこともあって、待つ必要はなかった。ここでカメラはザックにしまうことにした。
カニのたてばいは、クサリはしっかりしているし、足場もあるので、登っていくのに特段問題はなかった。直線的に登るのかと思ったが、そういうわけでもない。けっこう長い登りなので、ひたすら頑張って登るだけである。クサリをつかんで登るだけなら、怖いこともない。
カニのたてばいが終われば、もうすぐ山頂かと思ったが、もうしばらく歩かなければならなかった。早月尾根の登山道と合流すると、あと一息。
祠のある山頂は大勢の登山者で賑わっていた。晴れていて、展望も素晴らしい。
祠の前はひっきりなしに記念写真を撮る人がいたが、下山しようというときになってようやく人がいなくなったので、写真を撮った。
そして、下山開始。
下りの難所はカニのよこばい。若者グループがクサリに取り付いていて、私の前にはおじさんとおばさんがいたのだが、私に先を譲ってくれた。
カニのよこばいは最初に一歩が問題となるらしい。剣山荘には写真で、右の足場の位置を説明してあった。
さて、若者グループ最後の人が苦戦していた。問題箇所には下向きの矢印があったが、先行グループは真下に降りず、クサリに沿って斜めに降りていこうとしていた。左足を途中の足場に置いて、右足を降ろしていくのだが、足場がわからず苦戦していた。先に降りた人たちが、「もっと下」などと声をかけ、やがて通過していった。
次は私の番だ。
下向きの矢印とその下に足場が見えていたが、ちょっと遠くに見えた。そして、先行者に倣ってクサリに沿って降りていったのだが、左足を途中の足場に置いても右の足場が見えない。こりゃ、本当にむずかしいわ。
もたもたするばかりで右の足場がわからない。単独だからアドバイスしてくれる人などいない。先行者はすでに先に行っているのだ。上を見ると、おじさん、おばさんの後ろにも何人か待っている。
「やばい!」私のせいで渋滞してしまっているではないか!
しかし、そこで、おじさんが「(気にしなくていいから)ゆっくり行きなさい」といった感じで声をかけてくれた。
これでちょっと気が楽になって、再度トライ。
左足の足場は大丈夫そうだけど100%の信頼はできなかったので、クサリを頼ることにした。しっかりクサリをつかんで重心を下げていくと、右の足場が見えた!
あとは、慎重に横に進んで行くだけだった。
私に先を譲ってくれたおじさんはあっさり通過したが、おばさんが苦戦していた。無理もないことだと思った。
(あとでネットで調べてみたところ、やはりあそこは矢印に従って、右足から降りるのがいいらしい。)
さて、よこばいが終わった先には長いハシゴが待っていた。一歩目はまたいで降りるのでちょっと怖いが、後ろ向きに降り始めれば、あとは一段ずつ降りていくだけである。
さらにクサリを伝って下っていくと、トイレがあった。
平蔵の頭のクサリ場を越えていき、前剱の門へと下っていく。
前剱の門から先は下山時に事故が多発しているという。登りよりも下りの方が危ないし、疲れてくればなおさらである。特段問題はなかったが、気を抜かずに下っていった。前剱の門から先は登りとは別ルートとなっているため、登りのあのクサリ場も通らなければ、鉄の橋も渡らない。前剱の頂上にもよらなかった。
もはや難所はないが、油断はせずにしっかり下っていった。
武蔵のコルから一服剱に登り返したところで休憩。
あとは問題なく、剣山荘まで下っていった。
剣山荘でヘルメットを脱いで、休憩。
やれやれといったところだが、ここから室堂までがまだまだ長かった。
剣山荘から別山乗越経由まではまた登りである。疲れた体にはけっこうきつく、ゆっくり歩いていくしかなかった。
別山乗越から剱岳を眺める。剱岳もこれが見納めである。
別山乗越で休憩した後、雷鳥沢キャンプ場へ下っていく。標高差500m近く下るので、結構長く時間もかかった。
雷鳥沢キャンプ場で休憩。ここからまた室堂までは登りとなる。遊歩道を歩いて行く。雲が広がってしまい、さほど感動的な眺めでもなかったので、早く室堂にたどり着くことを願いながら歩いていった。
剣山荘からは3時間以上かけて、ようやく室堂に到着すると、ホッとした。
軽く食事して、美女平行きのバスを待った。帰りは富山から新幹線で帰った。
腰の調子は良くはならなかったが、それ以上悪くもならず、なんとか2日間歩き通してしまった。しかし、腰を痛めてしまったので、今年の夏山もこれで終わりである。
当初はもう一泊して奥大日岳のほうに行ってもいいかと思ったが、結果的には一泊にしておいてよかった。
剱岳におけるヘルメットの着用率は非常に高かった。剣山荘でもレンタルを行っていたので、ほとんどの人がヘルメットを着用していた。山頂ではヘルメットをかぶっていない人たちがいたが、単に山頂で脱いでいただけだろう。歩いている際会った人でヘルメットをかぶっていなかったのは下山時に一人見かけたぐらいのものだった。
剱岳は槍ヶ岳よりも難しいとか、最難関の山という人もいるようだが、ほとんどのクサリ場は見た目ほど難しくないし、恐怖感もない。ただし、カニのよこばいを除く。カニのよこばいだって、みんな歩いているのだから、なんとかなるだろうと軽く考えていたのは間違いだった。
しかし、難易度ということなら、八海山の方が少し上だろうか。
剣山荘(4:40)→一服剱(5:01)→前剱(5:47-5:56)→剱岳(7:04-7:35)→一服剱(9:24-9:31)→剣山荘(9:48-10:02)→別山乗越(11:14-11:20)→雷鳥沢キャンプ場(12:14-12:22)→室堂(13:13)