明け方、小屋を出ていけば、東の空が赤く染まっていた。
二の池新館の前からでも御来光を見ることができるのだが、もう少し高いところに登ればもっと眺めが良い。それで、二の池本館の前を通って、上に登っていくと、ぐっと展望が広がって、二の池新館の前からは見えなかった南アルプスや富士山も眺められた。
北アルプス、中央アルプス、南アルプス、八ヶ岳、富士山など素晴らしい展望である。
北アルプスは手前に乗鞍岳が大きく、その右には槍・穂高連峰が連なっていた。左の方には笠ヶ岳がよくわかった。
中央アルプスの奥に南アルプスが横たわる。中央アルプスは木曽駒ヶ岳やその右の尖った宝剣岳などがよくわかった。南アルプスは、甲斐駒ヶ岳や北岳、さらに右の方には塩見岳もよくわかった。富士山は手前にある山のためにちょっと見づらかったが、見紛うことはなかった。
日の出は北八ツのあたりからだった。左の蓼科山ははっきりそれとわかった。
朝日を受けて、二ノ池の向こうの斜面も赤く染まった。
小屋に戻って朝食を食べると、出発の準備をする。
時間に余裕のない計画を立てていたので、準備が整うとさっそく出発である。
ところで、御嶽山の山頂部は東西1km、南北4kmに及び、広い山頂部には四つの峰と五つの火山湖、一つの火口原が存在する。そこで、今回、この広い山頂部を歩いて回ることにした。
また、御嶽山は滝も多く、百間滝もよさそうだと思ったので、利用者の多いロープウェイや中の湯ではなく、黒沢口の四合目まで登山道を下っていくことにした。
しかし、問題となるのが1日3本しかないバスである。山頂を周遊した後では、10時台にある1本目のバスは無理だから、12時過ぎの2本目のバスに乗るべく、各コースタイムポイントの目標タイムを設定していった。3本目のバスは3時台なので、2本目に乗り遅れたら、3時間遅れることになる。そこで、各コースタイムポイントで時間をチェックして、バスに乗り遅れそうだったら、百間滝はあきらめて中の湯からバスに乗ることにした。
6時3分、二の池新館を出発。サイノ河原へなだらかに下っていって、避難小屋へと登り返す。
尾根に登ると、御嶽山最大の湖である三ノ池を見下ろせた。三ノ池は深さも13mあって、一番きれいな湖らしいが、この時間、光線の関係で特段きれいには見えなかった。
摩利支天乗越から摩利支天山へ向かう。
朝のうちは晴れて眺めが良い。昨日はお昼から登ったのだからしかたがないが、来て良かったと思う眺めだ。
ゆっくりしている余裕はないので、時間を確認しながら先を急ぐ。
摩利支天乗越へ戻り、五ノ池へ下っていく。右手に三ノ池を見下ろしながら下っていくが、逆光なので、いまいちである。
五ノ池はほんの小さな池である。
五の池小屋のすぐ上が飛騨頂上である。
飛騨頂上から継子岳へ向かう。
コマクサの群生地にはまだコマクサが咲いていた。
右手に見える四ノ池は東側から水が流れ落ちていくため水はたまらないようになっているが、いくつか水の流れがあるのが見えた。
朝のうちでもあり、まだ前を歩く人がいなかったからか、ライチョウが登山道に出てきていた。5羽ぐらいはいたので、ライチョウの家族であろう。
継子岳は御嶽山では一番北にあるピークなので、北アルプスの前にさえぎるものはなくなった。
継子岳の展望を楽しんだら、四ノ池へ向かう。
継子二峰の手前にもコマクサの群生地があったが、わずかに残っているという程度で、花はもうほとんど終わりだった。
四ノ池の東側に下っていって、小川を渡る。四ノ池から流れる小川はこの先で4段80mという幻の大滝となって落ちていくのだ。
四ノ池から三ノ池の外輪尾根に登っていくと、眼下に三ノ池が見えた。御嶽山でもっとも大きく、深さも13mあるということで、二ノ池よりもさらにきれいな池だった。
三ノ池へ下っていくと、あちこちでコマクサが咲いていた。ここではまだけっこう咲いていた。
三ノ池避難小屋のあるところが開田頂上であるが、池のほとりであり、ここにはピークが見られないので、「頂上」という感じではない。
三ノ池避難小屋のある開田頂上で御嶽山の山頂周遊を終わりにして、下山開始。
継子岳まではいいペースだったのだが、開田頂上では予定よりも遅れがでていたので、ここからは急いでいく。
開田頂上から黒沢口八合目の女人堂へ向かう。
この道はトラバースしていく道で、途中、崩壊箇所があり、雪渓の通過もあった。
やがて女人堂に到着。少し遅れを取り戻していた。
女人堂から七合目へ下っていく。
七合目行場山荘のすぐ上で百間滝への分岐となった。
少しずつ遅れを取り戻してきていたので、百間滝へ向かう。百間滝への道の前半はトラバースしていく道で、後半は尾根を下っていく。ところどころに標識もあったが、けっこう長い道のりだった。
水の音がしてきて、もう少しかと思っても、すぐにはたどりつかなかった。
やがて閉鎖されている百間滝小屋に到着。その先の開けたところからは谷の向こうに百間滝が見えた。垂直に落ちる見事な滝だが、けっこう離れているので、遠くに眺めるだけである。
写真を撮って、さらに歩いていくと、展望台に出た。といっても、木や草があり、それほど展望が開けているわけでもなかった。百間滝の下に雄蝶ノ滝、左に女蝶ノ滝も見えた。他に、大正ノ滝が見えるらしいのだが、気がつかなかった。木の枝葉に隠れて見えなかったのかもしれないが、正確な位置関係を把握していなかったので、単に気がつかなかっただけかもしれない。
けっこう離れているため期待したほどの眺めではなかったが、とにかく目的としていた百間滝を眺めた後は、もう下山するのみである。
ちょっと歩きにくいところもあり、木道に滑ったところもあったが、やがてまた歩きやすい道になった。油木美林遊歩道という歩きやすい道だった。
なだらかな道が続いていたが、やがて急な下りになり、最後は立派な鉄の階段を下っていった。急な斜面であり、けっこう長く続く階段だった。
階段を下りきると、もう終わりは近い。
しかし、最後にもうひとついいところがあった。こもれびの滝である。
ここには休憩所もあったが、釜を持った小滝の上で間近に眺めることもできた。二条の滝で、右だけ2段になっていて、涼しげな滝だった。
この近くに不易ノ滝もあったのだが、登山道から往復30分ということで、最初からあきらめていた。
百間滝からバス停まではすぐだった。
11時44分、百間滝バス停に到着。最後に余裕を持たせて目標タイムを設定していたので、30分以上早く着いてしまった。
ここには駐車場やトイレもあったが、自販機の類はなかった。ここで待っていてもしかたがないし、ジュースでも飲みたかったので、車道を下っていくことにした。
朝のうちはいい天気だったが、この頃にはもう山頂方面はすっかりくもがかかっていた。
次のバス停は松尾滝。せっかくだから、見物に行った。水量は少ないが、ハングしており、いかにも修行に向いた滝だった。
しばらく下ったところで自販機を見つけてジュースを飲んだが、空き缶入れがなかったので、さらに歩いていき、結局、開山堂まで下ったところでバスに乗った。
木曽福島から塩尻へ向かい、塩尻から「あずさ」に乗った。平日の日中であり、塩尻ではまだガラガラで好きなところに座ることができた。
二の池新館(6:03)→摩利支天山(6:35-6:44)→飛騨頂上(7:10-7:13)→継子岳(7:32-7:37)→開田頂上(8:26-8:35)→八合目(9:20)→七合目(9:40)→百間滝(10:29-10:36)→百間滝バス停(11:44)→開山堂(12:25)