夜中に何度か目を覚ましたことはあったが、まずはよく眠れたほうだ。
午前3時半を過ぎると、早くも明かりが点けられた。4時からと言われていた朝食も早めに用意されて、4時前には食べ終えた。そして、出発の準備をする。天気は良さそうなので、日焼け止めを塗っておく。
そして、4時23分、三伏峠小屋を出発。北岳山荘までコースタイムは13時間を超えているので、早く出発するのに越したことはないのだ。
歩き始めはいちおうヘッドランプを点けていった。とはいえ、ランプがなくても歩ける程度の明るさではあった。しばらくはなだらかな道が続くので、急ぎ足で歩いて行った。こういう歩きやすいところでコースタイムの短縮を図るのだ。
順調に歩いて行って、5時1分、本谷山に到着。塩見岳の左に朝日が出てきた。
塩見小屋まではなだらかな道が続くので、コースタイム短縮のために急いでいく。
塩見小屋から山頂へは岩場もあり、傾斜もきつくなってくるので、多少ペースを落としていった。
今回は長いルートを歩くため、のんびり花を楽しむ余裕はなかったが、それでもミヤマオダマキが咲いているのを見つけるとうれしくなって写真を撮った。
やがて、塩見岳の山頂に到着。塩見岳は西峰と東峰があり、三角点があるのは西峰だが、東峰の方が標高が高い。西峰から東峰まではすぐなので、そのまま東峰へ向かった。
南アルプスの中央部にある塩見岳からは360度の展望を楽しむことができた。
北を見れば、仙丈岳、甲斐駒ヶ岳、北岳、間ノ岳、農鳥岳といった南アルプス北部の山並が一望できた。その左には槍・穂高連峰など北アルプスの山並が見え、さらにその左には中央アルプスの山並が一望できた。南には荒川三山など南アルプス南部の山が見えた。その右には大沢岳、中盛丸山など見覚えのある懐かしい山並も見て取れた。そして、東の方には富士山がきれいに見えた。
申し分なく晴れ渡り、素晴らしい展望だったが、今日はまだまだ長い行程が残っているので、展望を楽しみちょっと休憩した後、塩見岳を出発。
塩見岳から北へ向かうと、登山者も少なくなり、ごくたまに会う程度になった。
アクセスの不便な塩見岳に登ったら、縦走すべきと思っていたが、縦走せずにピストンで下山する人が多いようだ。山小屋に荷物を置いて、山頂まで往復するのだろう。しかし、塩見岳をピストンで往復して、山小屋2泊だとしたら、なんだかもったいない。
塩見岳からひと下りして北俣岳分岐から北へ急坂を下っていった。足を滑らせないように注意して下っていき、やがて崩壊した斜面の上に出ると右の樹林帯を回り込んで下っていった。
樹林帯を抜けていったところで出会った人たちに、どこから下ってきたのかと聞かれた。確かに下から見ると、いったいどこに登山道があるのかと思ってしまう。
北荒川岳でちょっと休憩。塩見岳の眺めが良かった。
北荒川岳から先は樹林帯が多くなった。日差しが強い日は、樹林帯に入った方が涼しくて良い。
いくつかの岩場が続くところでは樹林帯の上に出て眺めが良かった。(山と高原地図で「小岩峰」と書かれたあたり)
この先、安部荒倉岳まで1分の標識があったので、よっていった。縦走路からほんのわずかに左に登っただけで着いたが、三角点があるだけで、眺めが良いわけでもなかった。
樹林帯のなだらかな縦走路を急ぎ足で歩いていき、10時10分に熊ノ平小屋に到着した。
ここまでかなりいいペースで歩いてきたので、思っていたよりもかなり早く到着した。これなら、北岳山荘まで歩いていっても、それほど遅くなることもないだろう。熊ノ平小屋到着がお昼過ぎているようだと考え物だが、この時間で熊ノ平小屋に泊まるなどと言ったらかえっておかしいというものである。小屋は閑散としており、登山者の姿はなかった。小屋の人を見かけただけである。
ここで、トイレと水場を利用させてもらう。水場でたっぷり水を飲み、ペットボトルのスポーツドリンクもここで飲み干して、水を補給していった。また、行動食のパンを食べたりして休憩した。
水場で手や顔を洗ってしまったので、あらためて日焼け止めを塗った。この後は、森林限界を超えてもろに日差しを受けることになるのだ。
10時21分、熊ノ平小屋を出発。ここからはもう急ぐ必要はなかった。ここまで来るまでにコースタイムを十分に短縮しており、あとはコースタイムどおりに歩けば十分なのだ。
それに、ここから間ノ岳まではひたすら登りで、しかも森林限界を超えて日差しをまともに受けることになる。すでにかなりの距離を歩いてきたのだし、無理せずゆっくり登っていけばいいのだ。
熊ノ平小屋からしばらくはまだ樹林帯であり、まだしばらくは比較的なだらかな道できつくはない。三国平の手前で完全に森林限界を超えてしまうと、もう樹林帯に入ることはない。前方に見える三峰岳目指して登っていく。
三国平を越えてもしばらくはなだらかに登っていくが、三峰岳への最後の登りはやせた岩稜になり、傾斜もきつくなる。
11時39分、三峰岳に到着。この時点で、仙丈岳や間ノ岳は見えていたが、北岳には雲がかかっていた。塩見岳の山頂付近にも雲がかかっていた。
三峰岳を出発すると、ちょうど仙塩尾根から1人やって来た。すぐに間ノ岳の方からも何人かやって来て、登山者の姿も増えてきた。
三峰岳から間ノ岳へは標高差約200mをひたすら登っていくだけである。これが最後の登りと思えば、なんとかがんばっていく。
12時26分、間ノ岳に到着。山頂は大勢の登山者でにぎわっていた。
このときには、間ノ岳のあたりもくもってしまい、周囲の展望を楽しむことはできなかったが、それでも日が差していて、座って休憩していても暑かった。すぐ下に雪田があったので、ちょっと下りていってみたら、さすがに岩の上にいるよりも涼しかった。
もうあとは北岳山荘へ下っていくだけなので、のんびりと休憩した。
12時56分、間ノ岳を出発。ここからは一気に登山者の数も増えた。しかし、多くの登山者は間ノ岳まで来ると、そのまま引き返すようだった。(その理由は北岳山荘に着いてからわかったのだが・・・)
北岳へ向かう登山道の脇には白、黄色、ピンク、紫と色とりどりの花が咲いていた。
北岳山荘まで小さなアップダウンを繰り返していくのだが、思っていたよりも遠かった。
北岳はすっかり雲に隠されてしまっていたが、最後に北岳山荘へ下る手前のところで、雲が切れて、束の間、北岳を見ることができた。
2時ちょうど、北岳山荘に到着。山荘入口の前には雪が残っていた。
北岳山荘はたいへん混んでいた。しかし、受付に30分もかかるというのは尋常ではない。あまりに時間がかかるので、ビールを買って飲み始めてしまった。
今日が一番の混み具合らしく、布団一枚に2人で割り振っていたが、さらに登山者がやって来れば、各部屋に割り振られるので、布団一枚に2〜3人になるということだった。
今回、やたらと混んでいたのには理由があった。奈良田〜身延駅間のバスが不通になっていたのだ。普通なら、白峰三山縦走して奈良田に下山する人もそれなりにいるだろうが、身延に出られないために間ノ岳で引き返す人が多かったのだ。もちろん、農鳥岳まで行く人もいたが、そこから引き返して北岳周辺の小屋に泊まる人が多かったようである。また、三峰岳から野呂川越への登山道も荒れているので行かないようにと書かれていた。
さらに、大樺沢左俣は雪が多く残っており、アイゼンが必要ということで、大樺沢を登ってきた登山者は大半が右俣を登らざるを得ず、登山ルートが限定されて、登山道はよけいに混んでしまったらしい。
布団1枚に2人というのはけっこう窮屈だったが、最終的には想定したほど登山者がやって来なかったようで、同室の何人かは他の部屋へ移動することになり、多少楽になった。
夕食は2回目で5時15分からの回だったが、この日の夕食は何回になったのか、随分遅くまで続いていた。
三伏峠からわざわざ長いルートを歩いてきて、その結果がこんな大混雑に巻き込まれるとは、何たる不運・・・とも限らなかった。
受付の際にも他の登山者がキタダケソウを見たという話を聞き、山荘の人も1箇所だけ残っていると話すのを聞いたのだが、同室の人たちもけっこうキタダケソウを見たということだった。北岳山荘に泊まったからこそ得られた情報だった。
三伏峠(4:23)→本谷山(5:01-5:03)→塩見小屋(5:59)→塩見岳(6:46-6:55)→北俣岳分岐(7:10頃)→北荒川岳(8:07-8:13)→小岩峰(9:11)→安部荒倉岳(9:48)→熊ノ平小屋(10:10-10:21)→三国平(10:51)→三峰岳(11:39-11:45)→間ノ岳(12:26-12:56)→北岳山荘(14:00)