3時過ぎに目が覚めた。起きるにはまだ早過ぎたが、9時前には眠っていたから、十分に眠れたといえる。今回はいびきに悩まされることもなかったのだった。
4時過ぎると、東の空が赤くなり始めていた。
そして、4時半になると起きて、活動開始。カメラを持って外へ出て行った。
ちょっとくもっているが、槍・穂高連峰はよく見えた。夜明け前の槍・穂高はちょっと青白く、しんとして、神秘的な感じがする。風はなく、思ったほどの寒さではなかったが、それでもじっと日の出を待っていると寒かった。今回は日の出そのものよりも、朝日を受けて槍・穂高が赤く染まるのを見たかった。
雲を通してだったが、丸い太陽が昇ってくるのが見えた。
が、雲があるためにまぶしくならない。
日が昇ってきても、雲にさえぎられて、明るく日が差さないので、山も赤く染まらない。
ほんのわずかに赤みを帯びた程度にしかならなかった。モルゲンロートを期待していたのにガッカリである。
朝食後、ゆっくりと出発の準備をする。下山するだけなので、のんびりとしたものである。帰りのバスは12時40分の予定なので、あまり急いで下山してもしょうがない。
蝶ヶ岳の登山道はどのルートも山頂直下まで樹林帯となっているので、展望のほうはほとんど楽しめない。だから、下山する前に、蝶槍まで往復することにした。蝶槍まではなだらかな稜線で歩きやすいし、眺めも良いのだ。
のんびりと蝶槍までの稜線を歩いて行った。
初日は長塀尾根を登ってきたので、横尾に下山してもいいかと思ったが、こちらは急坂であり、稜線から少し下ればすぐ樹林帯に入ってしまうので、やはり長塀尾根を下ることにした。
朝からちょっと雲があって、最高の天気とまでは言えなかったのだが、いよいよ下山という頃になって、バックの空が青くなってきたようだった。
8時16分、蝶ヶ岳の山頂を出発。
長塀尾根も下り始めれば、あっさりと樹林帯に入ってしまうので、名残惜しい。
樹林帯に入っても、所々で多少は視界が開けるところがある。
とはいえ、樹林帯に入ってしまうと、もはや穂高は樹林越しにしか見ることができない。
次第に青空が広がっているのがわかったが、樹林越しにしか見られないのが残念なところ。
乗鞍方面の眺めの良いところがあったが、その後はもはや展望は開けず、ひたすら樹林帯を下っていく。
下りは早い。
前日の登りでは、けっこう中盤、長く感じられたが、下りはあっという間で、なんだか途中省略してしまったような気がしたほどだった。登りはあんなに長かったのに・・・
気がつけば、雪はわずかになって、土が出ているところのほうが多くなっていた。
そして、アイゼンを外して下っていけば、あっさりと徳沢園の屋根が見えてきた。
10時8分、徳沢に降り立った。
徳沢でアイゼン、スパッツなどをしまい、ジュースを飲んで休憩。
さらに公衆トイレでタイツも脱いだ。
あとは上高地まで歩いて行くだけである。
すっかり青空が広がって、明神岳がきれいに見えた。
12時5分、上高地に戻ってくると、お昼時で観光客でいっぱいだった。
12時40分のバスに乗り、新島々の駅でカツサンドを買って、電車の中で昼食とした。
この2日間、晴天に恵まれて良かった。写真的には最高とは言えなかったが、贅沢言ってもしかたがない。
長塀尾根にはたっぷり雪があったが、トレースはしっかりついており、歩く上でまったく問題なかった。6本爪のアイゼンとストック1本で十分だった。靴が雪に埋もれるようなところもなかったから、スパッツもほとんど必要なかった。
他の登山者を見ると、大半は10本爪のアイゼンをつけており、ピッケルを持った人も多かったが、今回のような状況であれば、このルートでは今回の装備で十分に歩けるようだ。
今回の山行はsanpoさんのサイトなしに実現することはなかっただろう。
ゴールデンウィークの北アルプスはまだまだたっぷり雪があり、雪山装備が必要であり、気軽に行けるところではないと思っていたのだ。
しかし、今回のルートの場合、山頂直下まで樹林帯であり、滑落や雪崩の心配もないので、あとは気象状況に注意していれば、十分に楽しめることがわかった。連休中は登山者も多いので、雪が降ってもトレースがつくのは早くて、安心して歩けるようである。
まったく、sanpoさんには感謝なのだが、そのsanpoさんがまさか同じ日に蝶ヶ岳に登っていようとは夢にも思わなかったのであった。
蝶ヶ岳(8:16)→徳沢(10:08-10:32)→上高地(12:05)