残雪の蝶ヶ岳(1)

日付 :2010/05/02
コース:上高地→徳沢→長塀山→蝶ヶ岳

 蝶ヶ岳と言えば、槍・穂高連峰の眺めが素晴らしい山で、かつて北アルプスのガイドブックを見て、まず、この眺めを見てみたいと思ったところである。
 ただでさえ、槍・穂高連峰の眺めがいい山だが、雪のある時期ならさらに素晴らしく、sanpoさんのサイトで見て以来、いつか春の雪の残る時期に登ってみたいと思っていた。

 ゴールデンウィークの北アルプスはまだまだ雪が多く、山小屋も営業を始めたばかりである。春山とはいえ、冬山装備が必要だが、その中にあって蝶ヶ岳は危険箇所もなく比較的容易に登ることができる山である。それでいて、眺めは最高によいので、初心者にはうってつけの山かもしれない。
 とはいえ、北アルプスはまだまだこの時期雪も降る。吹雪になることもあるし、降雪後はトレースもなくなってしまうだろうから、十分な注意が必要である。

 今年のゴールデンウィークは見事に晴れマークが並んでいるのを見て、ついに行って見ることにした。今年のゴールデンウィークは5月1日から3日まで、ムーンライト信州の運行に合わせて、松本電鉄も4時45分発の列車を運行していた。松本駅改札の精算所で松本から上高地までの往復割引乗車券(4,400円)を買って、新島々まで行き、バスに乗り換えて上高地へ向かう。朝食に用意しておいたパンを電車の中で食べておいた。上高地行きのバスは2台出た。その大半が登山客であることは言うまでもない。
 上高地の朝はさすがにひんやりとしている。しかし、山の上はもっと寒い。-10℃ぐらいに冷え込むことも考えて、ロングタイツを履いていく。また、晴れて日差しも強そうなので、日焼け止めを塗っていく。ついでに帰りのバスの乗車整理券も窓口で発行してもらう。明日の下山時刻が何時になるかわからないが、とりあえず12時40分のバスということにした。

 7時1分、上高地を出発。
 まずは河童橋で残雪の穂高連峰を眺める。さすがにまだ真っ白で美しい。

残雪の穂高連峰
お馴染み河童橋からの眺め

 遊歩道を歩いて行くと、右手の斜面から何やら奇声が聞こえた。子供でも遊んでいるのか?と不審に思ったら、目の前を1頭のサルが歩いて行った。カメラを取り出す余裕がなかったので写真はあきらめたが、奇声を発したのもサルだったようだ。
 徳沢へ向かって歩いて行くと、ところどころで左手の視界が開けて明神岳が見えるが、見える場所によって少しずつ形を変えていき、徳沢の手前の河原からは雪をまとった岩山がギザギザに連なっているのが見えた。明神岳の5峰から前穂高岳への雪をまとった岩稜はいかにも穂高らしく険しくそして美しい。

明神岳・前穂高岳
明神岳・前穂高岳

 8時16分、徳沢に到着。ここから長塀尾根の登山道に入る。大半の人は徳沢から横尾へと向かっていくが、蝶ヶ岳へ向かう人もチラホラいて、ちょっと安心する。
 登山道は始めのうち雪がないが、登っていくにつれて少しずつ雪が現れてくる。そして、アイゼンなしでは歩きにくいと感じられてきたところで、アイゼンをつけることにした。その少し前、下ってきた人がアイゼンをつけていたので、ちょうどいい頃合いだろう。
 長塀尾根の登山道は徳沢から長塀山までの標高差が約1000mあるが、樹林帯のルートでほとんど展望もない。最初からけっこう急な登りが続くが、どの程度登ったか目安になるものがあまりない。急な登りが一段落して、ちょっとなだらかなところに出ると、けっこう休憩している人たちがいたが、このあたりが標高2000mを超えたあたりだろうか。
 その後、再び急登になるが、急登が終わると右へトラバースしていく。これがだいたい標高2250m付近だろう。
 トラバースが終わって、再び尾根を登り始めるが、今度は傾斜もゆるくなって、歩きやすくなる。
 すでに雪はかなり多くなっているが、しっかりトレースがついており、歩きづらいところはなかった。靴が埋もれるようなところもなく、歩行ペースも無雪期と変わりない。樹林帯のため前半は必要なかったが、中盤からは日の当たる部分での雪からの照り返しが強くなってきたので、サングラスをしていくことにした。
 長塀尾根のルートは長く、なかなか長塀山にたどりつかなかったが、ところどころで視界が少し開けて、穂高や他の山並みが見えてきた。
 10時33分、長塀山に到着。三角点は雪に埋もれ、ピークを示す標識もなかった。
 山はなるべく早い時間に登った方がよい。午後になって逆光になると、写真的にもいまいちだし、長塀山まで来ればもうあと100mちょっと登るだけだから、休憩なしで登り続ける。
 ・・・とはいうものの、そう簡単に山頂にはたどりつけず、まだまだしばらく歩き続けるのだった。
 妖精の池もまだ雪に埋もれているようで、どこだか気づかずに通り過ぎた。
 最後に樹林帯を抜け出せば、蝶ヶ岳の山頂はもうすぐだ。
 11時6分、蝶ヶ岳の山頂に到着。
 真正面に見える穂高連峰とその右の槍ヶ岳、楽しみにしていた眺めだが、バックの空が青くない。雲が出てきて白っぽくなってしまい、ちょっとガッカリ。
 それでも、しばらくは周囲の展望を楽しんだ。あわてて山小屋に入ることもなかったのだ。

蝶ヶ岳ヒュッテと常念岳・大天井岳方面
蝶ヶ岳ヒュッテと常念岳・大天井岳方面の眺め
槍・穂高連峰
槍・穂高連峰
穂高連峰
前穂高岳・奥穂高岳・涸沢岳・北穂高岳
槍ヶ岳
槍ヶ岳

 徳沢からの登りでは、汗をかけば着替えなければならなくなるから、あまり汗をかかない程度のペースで登ってきた。そんなだから、歩いている分にはまったく寒くなかったし、手袋をしていても暑いくらいだった。
 しかし、樹林帯と違って風もあるし、山頂でじっとしていると寒くなった。
 それで、蝶ヶ岳ヒュッテに入って受付を済ませた。
 まだ時間的に早かったので、小屋の中は空いていたが、長塀尾根のルートでは大勢の登山者が登っており、大人数の団体さんもいたから、けっこう混むことが予想された。

 用意してきたパンを昼食にした後、さて、まだまだ夜まで時間があるがどうしよう?
 夏なら、外に出て飽きもせずに展望を楽しむところだろうが、じっとしていると寒いし、午後になってだんだん雲が出てきたようなので、あまり期待もできない。
 それで、部屋の中で用意してきた本を読んでいた。帰りの電車で読もうと思って持ってきたのだが、結局、夕食前に読み終えてしまったのだった。

 午後からくもってきたこともあって、夕日もあまり期待していなかったのだが、夕食前にちょっと外に出てみたら、青空も出てきており、穂高連峰の上に雲はあったが、なんとか夕日が見られるかも・・・と期待を持てた。
 で、夕食後、カメラを持って、外へ出て行った。
 槍・穂高の上空には依然として雲がかかっていたが、なんとか夕日は見られそうだった。そして、北穂高岳の上から大キレットへと落ちていく太陽を眺めていた。

常念岳・大天井岳方面
常念岳・大天井岳方面の眺め
大キレットに沈む夕日
大キレットに沈む夕日
大キレットに沈む夕日
大キレットをアップで
日没直後の槍・穂高連峰
日没直後

 大キレットに沈んでいく夕日をしっかりと写真に撮ることができて大満足。
 日が沈んだ後もしばらくその場に留まっていたが、残念ながら空はそれ以上赤くは染まらなかった。

 夜は特にすることもなかった。安曇野の夜景が見えたが、さほど空気は澄んでいないようだった。
 それで、消灯になる前に眠ってしまった。なお、毛布と布団一枚ずつでは寒いので、服をいっぱい着たまま寝ることにした。
 前夜はろくに眠っていなかったし、寝る前に缶チューハイを飲んだこともあって、ぐっすり眠ることができた。

2日目へつづく)

上高地(7:01)→徳沢(8:16)→長塀山(10:33)→蝶ヶ岳(11:06)

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