冷え込むのは承知の上だった。空気が澄んで展望が良いだろうと期待していた。
しかし、稜線上ではものすごい強風が吹き荒れていて、寒かったというだけでなく、積もった雪が強風に吹き飛ばされてすさまじいばかりの雪煙には驚かされた。
今回、どうせ縦走はできないのだから、犬越路経由で登っていこうかと考えないでもなかった。
しかし、それだとけっこう時間もかかるだろうと思って、素直にツツジコースを登っていくことにしたのだが、まったく正解だった。犬越路からだったら、あの強風下ではたして無事に登れたかどうか?
今回はけっこう雪が積もったようなので、登山靴を履き、ストックも持っていった。軽アイゼンももちろん持っていったが、こちらは使用せず。普段は薄着で登ることが多いが、今回は寒いので最初からフリースを着ていった。(長袖シャツ+ジャージ+フリース)
ツツジコースの登りはほとんど問題なかった。
それなりに雪はあったが、特に多くもない。
西丹沢にはけっこう車が駐車してあったので、けっこう登山者は多かったのだろうか?
今日はかなり冷え込んだが、風が強く、雲もちょっと出ていて、朝から富士山には雲がかかっていた。
展望園地で眺めると、それでも富士山は少し雲が取れ始めてきたようだった。
上の展望台まで登ると、さらに雲が取れてきていた。
木道が始まるあたりから、風が強まってきた。
サラサラの雪が強風に飛ばされて、踏み跡を消しにかかり、「あれ? 今日はまだ誰も歩いていないのか?」なんて錯覚を起こしかけたり。
帰りの予定ルートである石棚山稜へのトレースはなかった。
木道から離れたところで、団体さんが風を避けて休憩していたが、北側から強風が吹き付けており、やたらと寒かった。
風速が1m/s増すごとに体感温度は約1℃ずつ低くなるというが、ただでさえ今日は寒いというのに、この強風では体感温度はいったい何度ぐらいになるのだろう?
木道は部分的には雪に埋もれていたが、全般的にはそれほど深い雪でもなかった。
木道を通過し、山頂直下では風もなく、日差しを受けてちょっと暖かくホッとする。
空気が澄んでいて、伊豆大島や利島、新島などがよく見えた。小田原あたりもくっきりと間近に見える。
山頂のベンチに荷物を置いて、犬越路方面に少し下って写真を撮ることにした。降雪後に犬越路から登ってきた登山はいないようだ。(あとで写真をチェックしてみたら、トレースがあるのを確認できたので、やっぱり歩いた人はいたようで、地吹雪で消されていたようである。)
見晴らしのいいところまで下って写真を撮ろうと思ったら、すごい風が吹き付けてきた。ものすごい雪煙を吹き付けられるので、顔を向けていられない。地吹雪状態である。
たまらず後ろを向いて、雪煙を写真に撮り、肝心の展望はあきらめようかと思ったが、風がやんだときになんとか撮ることができた。
青ヶ岳山荘側に下っていくと風をよけられてホッとする。
蛭ヶ岳から塔ノ岳、鍋割山などよく見えた。
団体さんが青ヶ岳山荘に行ったが、小屋番さんは来ていないようだった。避難小屋として開放しているから、団体さんは中に入ったようである。
山頂もときおり強風に見舞われるので、パンを一つ食べると下山開始。
石棚分岐からトレースのない登山道に突入。ラッセルといっても積雪はさほではないから大丈夫だろうという判断である。
真っ直ぐ下っていくと前方が開けて富士山が見えるので、写真を撮ろうと思ったら、またまた強風に下から雪煙が吹き上げられてきたので、たまらず後ろを向いてしばらく我慢。
強風に吹き飛ばされたところはくるぶし程度の積雪だが、吹きだまりでは膝までもぐる。だいたいは膝より下なので、さほど歩くのに難渋はしなかった。しかし、右から強風に雪煙を吹き付けられてたまらない。
テシロノ頭までの登り返しがきつかったが、登りが終わると割と楽になって、写真を撮る余裕も出てきた。
しかし、楽しい雪道歩きがずっと続くわけもなく・・・
登山道が右に折れると、やっぱり強風が待ち受けていた。P1401mの北側に回り込むと、再び右手から吹き上げてくる雪煙をたたきつけられた。強風が吹き荒れると、看板の裏とか大木の影に隠れてやりすごす。狭まった稜線では雪の少ないところばかり歩くわけにもいかず、膝上のラッセルもしばしば。
石棚山の先の分岐で玄倉方面へ下っていけば、強風も避けられるだろうと思ったが、しばらくは西風を受けた。(それでも少しは楽になった。)
西丹沢県民の森へはけっこう急な下りである。細い登山道で、雪に覆われてしまうと、ちょっとわかりにくい。目印のテープがいっぱいついているので迷うことはないが、一瞬マイナールートかと思ってしまった。かなりの急斜面を下っていくが、けっこう雪があったおかげで滑る心配もなく下っていくことができた。
植林帯にはいると、ひと安心。
そして、西丹沢県民の森からはひたすら林道歩き。林道にも雪が残っており、凍結箇所に注意していった。
玄倉ではタイミングが悪く、長いこと待たなければならなかった。
まずは、ジャージの下にもう一枚シャツを着て、着替え終了。
ふと、フリースのポケットの中を見て、ビックリした。
ポケットに雪が入っていたのだ。左は少なかったが、右はポケットいっぱいの雪だった。
石棚山稜で右側から吹き付ける雪煙を浴びたが、その際、ポケットの中にいっぱい雪片を詰め込まれていたのだった。
あわててポケットの中の雪を外に出したが、サラサラした雪で、ポケットの中もほとんど濡れずに済んだ。
今回は風も強く、寒いのを承知の上で登っていったのだが、まさかあれほどすごいとは思いもしなかった。あんなサラサラの雪というのも丹沢では初めてのような気がする。そして、丹沢で地吹雪を体験することになるとは夢にも思わなかった。
また、降雪後まだ誰も歩いていない登山道を歩いていけたのはよかった。
とはいえ、もう地吹雪は遠慮したい。顔が凍り付きそうだったから。(>_<)