石鎚山は西日本第一の高峰で、古来、信仰の山であり、日本七大霊山の一つである。
登山ルートはいくつかあるが、西条からバスに乗るのが一番交通の便がよい。1時間足らずで石鎚ロープウェイ前に到着すると、ロープウェイを利用して標高1280mまで一気に登ってしまう。
ロープウェイの山頂成就駅から歩き始め、しばらくすれば石鎚神社成就社である。
成就社からは八丁坂の下りで、八丁まで下ると登り返していくことになる。
下界は真夏の猛暑でも歩き始めがすでに1200m以上あって、樹林帯で直射日光を浴びないので、暑くはなく、気持ちよく歩いていく。
成就社からの表参道には、3つの鎖場があるが、その前に試しの鎖がある。後の3本の鎖を登れるかどうかを試す鎖場ということのようなので、試しに登ってみる。岩がちょっと濡れていたので、滑らないように注意しつつ、ガンガン登っていったのだが、これが思いの外に長い。私の後に続いていた人たちと間隔が開いていたので、途中でちょっと一息入れた。しかし、試しの鎖でこんなに長いとは・・・
ようやく登りきって、ヤレヤレと思ったら、今度は反対側にクサリを伝って下ることになった。足下が見づらいから下りの方がやっかいである。そして、最後の最後でもうちょっとで終わるというところで足場がなくなって困ってしまった。いやはや、慣れない人には、試しの鎖といえども、安易に取り付くとたいへんである。石鎚山の鎖はいずれも迂回路があるので、自信のない人は迂回路を行くほうが安全である。
夜明峠の手前まで来ると石鎚山が前方に現れる。山頂まではまだかなりの標高差が感じられる。これから急な登りになるのだ。
そして、いよいよ鎖場の始まり。一の鎖(33m)が登場。が、試しの鎖と比べて短くて簡単そう。実際、自信のない人が試しに登るのは一の鎖の方がよさそうである。
二の鎖は65mと長い。そして、こちらはよい足場のないところもあるため、鎖に三角の足場が付けられており、足を掛けて登っていった。長い鎖だが、これを登る人は多く、子供連れの人たちも登っていた。
三の鎖元の小屋の建て替え工事のため、三の鎖は通行止めになっていた。
迂回路には桟道が設置されていた。山頂付近は急な斜面なので、普通の登山道など作れないのだ。立派な桟道が設置されるまでは、容易に人を寄せ付けない山だったのだろう。
弥山には石鎚神社があり、多くの登山者でにぎわっていた。
石鎚山の最高峰は天狗岳である。石鎚神社の向かい側から鎖を伝って下り、天狗岳へ向かう。ガスがかかっていて、荷物は置いてカメラも持たずに行く。大半の登山者は弥山まで登って終わりのようで、天狗岳へ向かう人は少なかった。
鎖を伝ってひと下りすると、ヤセ尾根を慎重に進む。絶壁から下を見下ろせるところもあって緊張する。そして、西日本最高峰の岩の上に立った。ガスがかかって展望がないのが残念である。
弥山まで戻ると、ちょっとガスが晴れて天狗岳が見えた。
石鎚神社にお参りし、頂上山荘で少し休憩。
パラパラと小雨が降る中を下山開始。
鎖を下ることもできるが、多くの人は登りだけで下りは迂回路を行くようである。私も鎖の場所には気がつかないまま迂回路を下っていった。
夜明峠のあたりでは晴れ間が出てきて、雨は山頂付近だけかと思った。
帰りのバスの時間には余裕があり、来た道をまっすぐに引き返すよりは別のルートを下った方がおもしろいだろう。というわけで、夜明峠から右へ下っていくルートに入った。
藪をかき分けていくような道だったが、この道に入ってすぐにアサギマダラなどの蝶がいっぱい現れた。すぐ目の前の花に蝶が留まっている。登山道を進んで行くには花をかき分けていかねばならず、蝶にどいてもらいながら進むことになるが、その先々に蝶がいっぱい留まっていた。蝶の楽園だった。
蝶の写真を撮ったら、そのまま引き返せばよかった。
歩く人も少ないようで、藪がかぶっており、前日の雨で藪は濡れていたため、ズボンが濡れることになった。振り返ると、他にも一人下ってくる人がいた。そんなこともあって、そのまま下っていったのだが、雨はやがて本降りになった。それで雨具を着て下っていく。
そのうち、雨はやんだが、沢沿いのルートでは虫が多かった。手の甲や手の平が「痛いっ!」と思ってみると、アブがとまっているということが何度かあった。そこら中飛び回っていて、ズボンにもたかっていたので、手にくっつかれないように大きく手を振って歩いたりしたが、それでも何度か刺されたのだった。
雨の後は、濡れた木橋や石などが滑りやすかった。アブがいるから急ぎたいが、滑りやすいところでは慎重に行くしかない。ちょっと長めの丸木のハシゴを下るときは「難所」と思ったが、なんとか滑ることなく通過した。
のんびりしている余裕はなかったが、途中にいい感じの滝があった。1つは釜を持った2段の滝で、橋の上から見下ろすことができた。もう1箇所いい感じの滝があったが、こちらは木が邪魔して、沢に下りないことには写真を撮れないようなところだった。
帰りのバスは余裕で間に合うと思っていたが、時計を見たら、それほど余裕はなさそうだった。もう少しとは思ったが、バス停まであとどれぐらいかわからず、とにかく急いで下っていった。バスの本数は少ないので、絶対に乗り遅れたくなかったのだ。
やがて、西之川に到着。なんとかバスの時間に間に合った。石鎚ロープウェイ前から何人か乗ってきたが、あまり濡れた形跡がない。表参道は雨が降らなかったのか?(まさかね〜)朝のバスで一緒だった人たちはこのバスで帰ると思っていたのだが、そうでもなかったようだった。雨宿りしていて、下山が遅れたのだろうか?
石鎚山は日帰り可能な山だが、山小屋に泊まって縦走すればもっと充実した山歩きができるのだろう。とはいうものの、交通の便がよくないので、なかなかむずかしいだろうか。