苗場山の登山ルートはいくつもあるが、首都圏からのアクセスが一番よいかぐらスキー場からの祓川コースや秋山郷からのメインルートである小赤沢コースの利用者が多いのだろうか。しかし、祓川コースの場合、マイカーかタクシー利用となるので、単独で公共交通機関利用の私には行きづらいところである。紅葉シーズンであれば、田代ロープウェイが運行されるため、カッサ湖から登ることができるのだが、残念ながら夏場は運行していないため、このコースは登れない。
それで、林道歩きが長くなるが、昌次新道を登っていくことにした。
越後湯沢駅から苗場プリンスホテル行きのバスにはけっこう登山者が集まってきた。みんな苗場山かと思ったが、平標山の人も多かったようである。元橋バス停で降りたのは私だけだった。ここから登ろうと考える人は少ないようである。
バス停から車道に沿って歩いて行くと、まもなく右手に登山道入口が見つかった。
さっそく少し登っていくと、すぐに下りになる。川を渡るため一旦下るのだ。
橋を渡っていくと、右手に広いグラウンドがあって、夏合宿だろうか、多くの人がグラウンドにいたようだった。
長いルートだが、前半はなだらかな道なので、コースタイム短縮を図るべく、早足で進んでいく。
しかし、このルート、前半はいくら歩いても、高度の方はほとんど上がっていかない。ちょっと登っていったかと思うと、川を渡るためにまた下ってしまうし、そんなのばかりだった。
しばらくして、ようやく林道に出たが、林道歩きがまた長かった。
林道を歩いている途中、タクシーとすれ違った。林道に出る前、登山道を歩いているとき、左手の方から車が通る音が聞こえたのだが、それがこのタクシーだったのだろうか。どうやらタクシーで入ってきた登山者がいたようである。
延々と歩いて、ようやくゲートに到着しても、林道終点まではまだしばらく歩かなければならなかった。
林道が終わって、橋を渡ると、4合目の標識があった。棒沢がこのルートの4合目である。
登山道に入って、しばらくは登っていくのだが、やっぱりまた下ってしまう。
そして、橋を渡ると、赤湯である。ここには一軒宿の山口館がある。林道終点からもけっこう歩かなければならない秘湯で、川沿いに露天風呂があるようだった。
赤湯が5合目で、山口館の前には水場があったので、たっぷり水を飲んでいった。
赤湯からは川沿いに少し歩いて行ってから、橋を渡って、登りになる。少し登ると、分岐になり、左の赤倉山へのルートを分けて、右へ行くが、またまた下りである。
そして、橋を渡ると、ようやく本格的な登りになった。
6合半が水場。長いこと歩いているので、喉が渇き、ここでも水を補給。
急登が終わって、なだらかになってくると、気持ちよくペースを速める。フクベノ平も近い。
7合目のフクベノ平で昼食。
食事中、足音がしたので上から誰かが下ってきたのかと思ったが、誰もいなかった。何か動物がいたみたいだったが、はっきりとは見て取れず。
再び登り始めると、おばさんが3人下ってきたのだが、8合目付近で小熊に会ったということだった。小熊はあわてて逃げていったということだが、安心できない。このルートは登山者も少ないし、熊が出ても不思議でない。それで、熊鈴をつけて登っていくことにした。
8合目は見晴尾根で神楽ヶ峰など眺められた。
8合半が深穴の大岩で、一目見てそれとわかる大きな岩があったが、樹林帯のため写真には撮りづらいところだったので、写真は撮らずにパス。
シラビソ廊下の9合目あたりから、ようやく展望が開けてきた。
シラビソ廊下を抜けると、岩場の急斜面を登っていく。クサリの付いた急な登山道である。
登りきるちょっと手前でウメバチソウが咲いていた。
岩場の急登が終わると、突然、目の前に広大な湿原が現れた。これまで歩いてきた登山道からはまったく予想もつかないような光景が現れて感動する。特に、今回は他のルートと比べても長いルートを延々と歩いてきた後だけに余計に感激する。
9合半の標識があり、広々とした平原の向こうに山小屋と山頂が見えた。
あとは写真を撮りながら、のんびりと木道を歩いて行った。
遊仙閣(休業中)の脇に山頂の標識があったが、木に囲まれていて展望もなかった。ただニッコウキスゲが咲いていた。
苗場山自然体験交流センター(旧山頂ヒュッテ)で受付をした後、カメラを持って散策に出た。
チングルマはすでに終わっているなど、花の最盛期は過ぎてしまっていたようだが、ワタスゲの果穂はいっぱいあった。時間があったので、湿原をあちこち歩いて回った。
夕食はカレーで、もちろんお代わり自由。十分に食べることができた。
9時消灯だったが、8時にはほとんどの人が寝ており、静まりかえっていた。
朝、起きたら雨だった。
御来光を見るどころではない。予報では確か晴れのはずだったが・・・
当初の予定では小松原コースを下っていくつもりだったが、コースタイムは9時間のロングコースである。登りも長いルートだったが、思ったほどコースタイムを短縮できなかったことを考えると、かなり時間がかかりそうだった。すでに、昨日、一昨日と十分に歩いたので、もういいやと思い、昨日、山頂に着いた時点で、小赤沢コースを下山することに変更していた。天気が雨なら、これが一番で、あきらめもつく。
天気が悪いので、朝食後も急ぐことなく、のんびりと出発の準備をする。
6時35分、小屋を出発。
幸い、出発する頃にはほとんど小降りになっており、湿原を歩いて行くうちに雨はやんだ。
赤倉山への分岐を過ぎると、一旦樹林帯に入るが、和山への分岐の手前で再び湿原に出た。しかし、濡れた木道は滑りやすく、注意していたにもかかわらず滑ってしまった。
西のほうは案外天気がよくて、北アルプスも眺められた。
分岐を過ぎると、まもなく湿原とはお別れで、急な下りになった。もうあとは下っていくだけである。
下りは早い。昨日のルートよりも短いのでなおさらである。
下っていくうちに天気は回復していったので、途中で雨具を脱いだ。
ポツポツと登ってくる人と会った。
水場のある4合目でちょっと休憩。
そして、9時2分、駐車場のある3合目に到着。
この先もまだしばらくは登山道を下っていった。
やがて車道に下りると、あとは車道に沿って下っていくだけだが、途中、見事な滝があったので、見物していった。大瀬(おぜ)の滝で、落差15mぐらいだった。
車道を下っていくと、前方に見える山のほうは晴れて青空が出ていた。こんなことなら、もう少しゆっくりしてくればよかったかと思ったが、振り返ってみると、下ってきた山には雲がかかっていたので、苗場山が晴れていたかどうかはわからないのだが。
10時16分、小赤沢バス停に到着。
小赤沢のバス停に着いて、Tシャツを着替え、ジュースを買って飲んだりした後、やってきたバスに乗って帰った。津南行きのバスは駅まで行かなかったので、終点で乗り換えた。越後湯沢行きのバスに乗ってもよかったのだが、津南駅に出て、飯山線に乗って十日町まで行き、十日町で昼食。その後、北越急行ほくほく線に乗って越後湯沢へ向かい、越後湯沢から新幹線に乗れば、あとは早かった。
元橋(8:53)→林道終点(10:16)→赤湯(11:10)→フクベノ平(12:36-12:50)→深穴の大岩(13:37)→九合半(14:35)→苗場山(14:57)
苗場山(6:35)→平太郎尾根分岐(7:09)→三合目(9:02)→大瀬の滝(9:46-9:55)→小赤沢(10:16)