前夜の8月6日、上野駅23時03分発の寝台特急「北陸」に乗車して富山へ向かう。
富山の到着予定時刻は8月7日の5時34分である。
富山地方鉄道に乗り換えて、有峰口まで行き、6時30分発のバスに乗れば、7時35分に折立に到着の予定である。
くれぐれも寝過ごして、富山の先まで行ってしまわないように気をつけていった。
朝5時過ぎに目が覚めて、そろそろ降りる準備をすることにした。
でも、窓の外を見て、なんとなく変な気もしたのだ。
朝になってようやく入った車内放送は、「激しい雷雨があり、高崎駅付近で落雷があったため、3時間50分遅れているというもの。
まさかこんなことになろうとは夢にも思わなかったことである。
そう言えば、夜中の1時過ぎに目が覚めたとき、どこかに停車していたのだが、ずっとどこかに停車していたのだろう。
「北陸」は長岡で進行方向転換するのだが、5時過ぎに窓の外をのぞいてみたとき、まだ進行方向は変わっていなかった。日本海側に回れば、窓から海が見えるのに、全然見えなかったわけだ。
とにかく、ここまで来た以上、この先どうなるかわからないが、とにかく行ってみるしかない。
富山地方鉄道の立山方面行きの電車が9時54分にあったので、少し待ってこれに乗る。
「北陸」には他にもけっこう登山者の姿を見かけたが、私の他は誰も来なかった。富山駅からバスかタクシーでも使ったのだろうか?
10時49分、有峰口に到着。ひなびた駅である。駅の前には折立行きのバスが止まっていた。バスは11時30分発なので、しばらく待った。折立行きのバスは富山駅からの直行バスを含めて一日4本しかなく、朝のうちに3本出た後は、この11時30分発のみだった。考えようによっては、中途半端な遅れだったら、タクシー利用することになったかもしれないから、運がよかったのかもしれない。
折立行きのバスには、次の電車でやってきた2人を合わせて、たった3人の乗客を乗せて、11時30分に発車した。
バスの人の話では、今朝、折立では雨が降っていたらしい。
有峰口を出発したときはくもりだったが、折立に向かっていくと、パラパラと小雨が降ったりやんだり。バスは折立まで1時間とかからずに到着。
そして、12時21分、折立からスタート。当初の予定よりも4時間以上も遅れたスタートとなってしまった。今日、薬師岳に登ってしまうという予定はもう無理である。
まずは樹林帯を登っていく。
登り始めてまもなく、ポツポツ雨が降ってきたので、カッパを着る。
最初のコースタイムポイントである三角点には1時15分に到着。やっぱり、北アルプスの地図は丹沢あたりと違ってコースタイムがかなり甘いようだ。これなら、薬師岳山荘まで行けるのではないか?
ところが、三角点を過ぎると、たいへんなことになった。
登山道を川のように水が流れていたのだ。急な登山道を道幅いっぱいに濁流が流れ落ちてくるのにはさすがにびっくりした。登山道の端をできるだけ足を濡らさないように、ちょっと脇に上がったりしていったが、結局、靴の中まで濡らさずには済まなかった。濁流部分はそれほど長くはなかったが、その後はだいたいが水の流れる登山道だった。
晴れていれば、気持ちのよさそうなところでも、雨ではひたすら登っていくしかない。花を見ている余裕なし。
濁流のせいもあって、歩くペースが落ちたのはやむを得ないだろう。もっとも、元気なのは最初だけというのも確かなのだが。
午後3時までに太郎平小屋に着いたら薬師岳山荘を目指そうと思った。
そして、午後2時53分に太郎平小屋に到着したので、薬師岳山荘目指して歩き始めた。
が、木道を少し歩いていったところで、やっぱりやめることにした。
遅れを取り戻そうと無理しちゃいかん。雨降ってカッパ着てるけど体は冷えてるし、薬師岳山荘まではまだまだ長い。最初の計画どおり縦走できなくてもしかたがない。
で、太郎平小屋へ引き返して、受付を済ませた。
靴も靴下もびっしょり。ジャージのズボンもザックの中も湿ってる。山用のズボンでなくてよかったし、交換レンズなど持っていかなくてよかった。
濡れたカッパや靴など乾燥室に干すことにしたが、すでに乾燥室はいっぱいだし、靴の中までは乾かせるとは期待できなかった。
降り続いていた雨も夕方には上がって、部屋の窓から薬師岳が見えた。天気が回復したので、みんな外に出ていこうとするから、山小屋の草履が全部出払ってしまった。
外に出れば、薬師岳を始め、水晶岳や鷲羽岳などの山並みが見渡せたほか、日本海も眺めることができた。
夕食時、昨日は薬師岳、今日は黒部五郎岳といずれも雨だったと隣のおばさんが話していた。明日から晴れるからいいわねーと言われたけれど、天気予報を見れば、明日も傘マークがついていた。それでも、明後日からは晴れマークになっていたので、後半戦に期待である。
なお、太郎平小屋から薬師岳への登山道も途中、沢の水が増えて渡れずに帰ってきた人たちがいるという話を耳にした。私はそこまで行かずに引き返したのだが、やっぱり正解だったようである。
雨ということもあってか、太郎平小屋の受付は混んでいた。
今日は布団2枚に3人ということだったが、結局、一人一枚で使えたので窮屈な思いはしないで済むことになった。
乾燥室は大混雑だった。カッパだけでなく、Tシャツやジャージ、靴下、そして靴も乾燥室で乾かすことにした。靴の中まで濡れており、完全には乾かないだろうとは思ったが、少しでも乾かすことにした。
折立(12:21)→1870.6m三角点(13:15)→五光岩ベンチ(14:18)→太郎兵衛平(14:53)