6月には大勢の人が訪れる尾瀬も5月初旬はまだ雪に閉ざされている・・・
・・・と思っていたが、大清水から尾瀬沼に向かう分にはさほど困難はなさそうだとわかって、調べてみたら、すでに長蔵小屋が営業を開始していた。
長蔵小屋のサイトで調べたところ、4月25日現在、三平峠の積雪量は230cm、長蔵小屋付近の残雪は130cmとなっていた。ついでに書くと、大清水から一ノ瀬までは登山道の両側に残雪が少しあるが、登山道にはないということだった。
ちなみに、大清水から尾瀬沼(三平下)までは約2時間半のコースで、前半の大清水から一ノ瀬までは林道、後半の一ノ瀬から尾瀬沼までが登山道である。
以前から、残雪の山を眺めてみたいと思っていたが、これなら行けそうというわけで、残雪の尾瀬沼に行ってみることにした。
ついでに、大清水湿原ではすでにミズバショウが咲いているというから、残雪とミズバショウの2つを楽しめるというものである。
大清水では連休中、ミズバショウ祭が開催されているということもあって、けっこうな人出だった。
大半の人はミズバショウを見に来ただけだろうから、尾瀬沼に向かう人は少ないかと思ったが、案外、大清水から一ノ瀬までの林道を歩いている人は多かった。歩いている人の装備もまちまちで、しっかりとした冬山装備の人もいるが、軽装の人も多い。それどころか何も荷物を持たない人もいる。
はて? 一ノ瀬までの林道歩きで見所があるのだろうか?
(見るべきものなどないと思っていたのだが・・・)
まさか尾瀬沼まで行くわけじゃないだろうし・・・?
大清水のあたりに雪はなかったが、林道を歩いていくにつれて、林道の両側に雪が増えていった。
一ノ瀬には休憩所とトイレがあるが、休憩所はまだ営業していなかった。
一ノ瀬から登山道に入る。これまでの林道に雪はなかったが、登山道は最初から雪があった。
結局のところ、大清水から軽装で歩いてきた人たちは、ここで雪を見て引き返していったようである。(往復2時間かけて、このために来たとも思えないから、尾瀬沼まで行ってみようと安易に考えていたのかもしれない。)
登山道はまだ雪に埋もれている部分が多かったが、雪解けが進んで部分的に木道が現れてきており、踏み抜きに注意して歩いていく。
木道が現れてきているのは下の方だけで、登っていくつれて雪は増えて、完全な雪道になる。
しっかり歩かれている道だし、赤布もあるから迷うようなところはない。赤布はけっこう高いところに付けられているから、真冬には相当の積雪があるということだろう。
登山道は、最初は沢に沿って登り、次にジグザグに登って尾根に取り付き、しばらく尾根を登ったあと、左に曲がっていくと、なだらかな道になり、やがて三平峠に到着。
三平峠を越えると、あとは尾瀬沼まで下っていくだけである。
左手の樹林の向こうに燧ヶ岳とまだ凍っている尾瀬沼が見えた。天気がいいから、雪をまとった燧ヶ岳がくっきりと見える。くもっていたりすると、ちょっとガッカリというところだが、これなら青空をバックに最高の眺めを楽しめそうであり、いやが上にも期待が高まってくる。
残雪を踏みしめて、尾瀬沼目指して下っていく。
三平下まで着くと、そのまま尾瀬沼まで下りていった。
雪に覆われた尾瀬沼と青空をバックにした燧ヶ岳。期待通りというか、以上というか、素晴らしい眺めに感動!(サングラスをはずすと、ちょっとまぶしかった。)
雪解けが進んでいるとはいえ、尾瀬沼の春はまだしばらく先で、周囲の山もみな雪に覆われている。1ヶ月後には大勢の人が訪れる尾瀬沼も、今はまだ訪れる人も少なく静かだった。こんなに静かで素晴らしい眺めを見られるなんて、やっぱり最高である。
尾瀬沼はまだ雪に覆われていたが、あちこちで氷がとけ始めていたので沼の上を自由に歩きまわることはできないが、まだ夏道ではなく、沼の上を岸に沿って歩いていくようになっていた。
夏道だと、尾瀬沼から燧ヶ岳が見える場所は限られてしまうが、沼の上を歩いていくので、燧ヶ岳がよく見える。これもこの時期ならではである。
三平下から長蔵小屋へ向かう。
向こうの方にも歩いている人たちの姿が見えるが、下の写真のとおり、今の時期はまだ訪れる人は少ない。
ところどころで雪解けが進んで、水面がのぞいていた。もう少し雪解けが進むと、夏道を歩かなければならなくなるが、そうなるともうこれだけの眺めを楽しめる場所は限られてしまう。ということは、やっぱりいい時期に訪れたということだろう。
長蔵小屋まで行くと、事前に確認したとおり、すでに営業開始していたが、売店のほうはまだだった。
ビジターセンターの前にある双眼鏡を覗いてみると、燧ヶ岳の山頂に人がいるのが見えた。
長蔵小屋付近の絶景ポイントで、しばし休憩。
このあたりは、かなり雪解けが進んでいたのだが、風がやんで水面が穏やかになると、燧ヶ岳を映し出してくれた。
大江湿原のほうもチラホラ歩いている人の姿が見えたが、こちら方面はまだ真っ白だった。
晴れていて、風もなかったので、さほど寒さを感じることもなく、しばらくは周囲の眺めを楽しんでいた。
十分に楽しんだ後、三平下に引き返す。
三平下から最後にもう一度振り返って、尾瀬沼と燧ヶ岳を眺めた後、大清水へ戻ることにした。
三平峠まで登り、一ノ瀬へ下っていく。
下っていくにつれて、次第に雪も少なくなり、木道も現れてくる。
そして、沢沿いに下っていくと、一ノ瀬で林道に出た。
あとは、ひたすら大清水まで林道を歩いて行くのみだが、やっぱりこの林道は歩いている人がけっこう多かった。
なぜか手頃な木の枝を杖にしている人が多いので不思議に思ったのだが、大清水の登山口まで戻ってわかった。登山口のところに、いっぱい杖が立てかけてあったのだった。
大清水まで戻ると、大清水湿原のミズバショウを見ることにした。
車道のすぐ脇にある湿原にミズバショウがいっぱい咲いていた。
道路のすぐ脇というのがちょっと興醒めだが、贅沢言ってもしょうがない。今回は尾瀬沼がメインで、大清水湿原はおまけのようなものだったのだから。
大清水でおそばを食べていたら、尾瀬沼までどれくらいかかるか聞いているおじさんがいた。
これから行ったんじゃ、日が暮れちゃうし、1m以上の雪があるんだから、登山靴やスパッツは必要である。
気軽に尾瀬沼まで行ってみようかと思う人がいるってことは、やっぱり林道を歩いている人たちもハイキング気分で尾瀬沼まで行ってみようと思ったのかもしれない。
まだ観光客が気軽に訪れることのできる場所ではなかったので、尾瀬沼は人も少なく静かだった。とはいえ、尾瀬沼に行くだけなら、特に難しいところもなく、アイゼンなしでも歩いていけるところだった。
今回は、大清水〜尾瀬沼の往復という短めのコースだったが、残雪の尾瀬沼は静かで素晴らしい眺めを楽しませてくれた。雪解け直後のミズバショウや夏のニッコウキスゲなど見所の多い尾瀬だが、残雪期もまた素晴らしく、季節を変えて何度でも訪れたい場所になった。