4月と言えば春だが、1000m以上の稜線で新緑が始まるのは5月の連休明けあたりからである。したがって、今の時期、春を満喫するなら低い山のほうがよい。だったら、なんで先週は主稜なんかやるのかと言われそうだが、それはそれ、単にその時々、自分が行きたいと思ったところへ行ってるだけなのだからしかたがない。ともかく、今回は、相模湖方面の低山へと出かけていった。
石老山に登るなら、相模湖駅から三ヶ木行きのバスに乗ってしまえば、あっという間に登山口まで着いてしまうのだが、今回は、バスには乗らず、相模湖駅からまずは嵐山へ向かった。低山であっという間に登れてしまう山だからか、この山で会ったのは1組の登山者のみだった。今の時期、登山道のあちこちでスミレなどの草花が咲いている。フデリンドウが咲いているところもあった。
嵐山を下ると、鼠坂(ねんざか)で一般道に出る。しばらくは舗装した道路を行き、やがて石老山の登山口となる。石老山に登るのは2回目だが、前回登ったのは高校1年のキャンプの時だから、もう当時のことなど覚えているわけもなく、初めて登るのと同じである。顕鏡寺のあたりからしばらくは、あちこちに巨岩が鎮座している。融合平で相模湖を見下ろした後は、わりとなだらかな道をたどって、やがて石老山の山頂に到着。山頂はけっこうにぎわっていた。山頂からは、丹沢方面の眺めがよかった。
石老山では、写真を撮ってちょっと休憩しただけで、さっさと出発。
篠原へ下ると、再び一般道に出て、南へ向かっていくと、やがて石砂山の登り口となる。石砂山は石老山よりも標高が低いから、たいした登りでもない。石老山よりも登山者は少ないようである。しかし、それにもかかわらず、今回の真の目的は石老山ではなく、この石砂山だった。
今回の目的は石砂山だったとはいえ、はたして期待したとおりにいくかどうか、はなはだ不安があった。しかし、石砂山の山頂に着いたとたん願望どおりになった。
その美しさから「春の女神」とも呼ばれ、かつては、丹沢にも広く分布していたといわれるギフチョウだが、現在は、県内でもごく一部で見られるだけとなってしまったようである。そして、そのごく限られた場所というのが石砂山というわけである。県の天然記念物に指定されているギフチョウだが、はたしてこの山に登ったからといって、簡単に見られるのかという不安があった。実際、山頂に着くまではまったく見かけることもなかったのだが、山頂に着いたら、あっさりと目の前を飛び交っているのを目にしたのだった。
石砂山で昼食にして、しばらくギフチョウを写真に撮っていた。けっこう写真に撮りやすいように、地面に羽を広げてとまってくれたりして助かったのだが、よく見ると羽の上部が赤いのがいた。ギフチョウってこんな羽だったっけ? と疑問を感じながらも写真を撮っていたのだが、後になって気がついた。山頂にも書かれていたことだが、調査のためギフチョウにマークがつけられていたのだった。
ギフチョウが見られるのは、一年のうちの一時期に限られるので、次はまた来年ということになるだろうが、とにかく今回ギフチョウを見ることができてよかった。
石砂山から菅井のほうに下っていき、一般道に出ると、やまなみ温泉のほうへのんびり走っていった。藤野駅まで走っていこうと思っていたのだが、今日はやたらと暑かったので、やまなみ温泉入口からバスに乗ることにした。ちょうどバス停の時刻表を見たら、まもなくバスがやってくるのがわかったからである。今日は、ギフチョウを見て、目的が達せられたため、もうあとはどうでもよかったのだった。