11時5分、中房温泉の登山口から登っていく。
合戦尾根は北アルプス3大急登の1つということで、どんな急な登りかと思ったが、それほどでもなかった。普段、丹沢を歩き回っているので、これくらいの登りはなんということもなかった。丹沢の大倉尾根の後半のように長い階段が続くときついが、合戦尾根では階段状の急な登りもあったが、それがずっと続くわけではないので、歩きにくいことはなかった。
少し登っていくと、あっさりと第一ベンチ、そして第二ベンチと通過していく。立ち止まって、ちょっと給水する程度で登っていく。さらに登っていくと、第三ベンチ、富士見ベンチと続く。富士見ベンチではいったん荷物をおろして、給水し、地図を確認したが、その後すぐに出発した。
12時32分、合戦小屋に到着。ここまでのコースタイムは3時間となっているが、1時間半で登ってしまった。
12時39分、合戦小屋を出発。
1時16分、燕山荘に到着。
穂高からタクシーで中房温泉へ向かう際、山の上の方に雲がかかっているのを見ていたので、今回、あまり展望は期待していなかった。実際、下の方は晴れていたが、登っていくにつれて、ガスがかかってきていた。だから、燕山荘まで登っても、展望は期待できないと思っていた。ところが、燕山荘まで登ると、稜線の西側は晴れていて、槍ヶ岳から裏銀座の山並みがきれいに見えた。右から左へずっと山並みが続いている。前回の南アルプスも良かったが、この眺めは前回とはまた違ってすばらしかった。本当に、こんなにおもしろくていいのだろうかと思うくらいよかった。
燕山荘ではさっそく受付。一泊二食付きで8700円だった。南アルプスの山小屋に比べて1000円ぐらい高い。今年は燕山荘80周年ということで、記念のバッチ(またはキーホルダー)をもらった。
その後、カメラと地図を持って、燕山荘〜燕岳〜北燕岳をのんびり歩きながら写真を撮った。
燕岳〜北燕岳にはコマクサの群生があった。
その後も、外で展望を楽しんだ。ずっと眺めていても全然飽きることがなかった。実際、1時間以上も眺め続けていたようである。
しばらくして、東のほうからガスが上がってきたことから、ブロッケン現象を見ることができた。太陽を背にして立つと、自分の霧の中に自分の姿が映り、その周りを丸い虹が囲むのだが、昨年の鳳凰三山以来のことである。
夕方近くなると、東側の雲も消えてきて、さらに展望がよくなった。北のほうには鹿島槍ヶ岳やその横に白馬岳なども見えていた。さらにその右手には妙高の山並みも見えた。
一人で行った場合、山小屋に泊まっても、することがなくて暇をもてあましてしまうところだが、燕山荘では主人のホルン演奏と楽しい話のため、そういうことはなかった。
燕山荘のトイレは水洗できれいだった。水をポンプアップしているため、自由に水を補給できるし、給茶器があってお茶も自由に飲める。山小屋のスタッフは名札をつけていて、店員といった感じ。おみやげの売店も普通の山小屋のイメージとは違う。ちょっとしたホテル風の山小屋といった感じであり、こんなにサービスが良くていいのだろうかと思ってしまう。
(2日目)
朝食は1回目が4時半から。日の出が4時55分頃となっていたので、その前に食べておくことにした。
朝食が済むと、すぐに外に出た。
今日も晴れて天気はよさそう。東側は雲海が広がっており、雲海の上に太陽が姿を見せるのを待った。晴れていたが、空には適度に雲がかかっており、それが太陽の光に赤くなって、なかなかきれいな日の出だった。八ヶ岳や南アルプスなども見えた。
御来光を見た後は、朝日を受けて赤くなる槍ヶ岳を見る番だが、写真を撮るにはシャッター速度が遅くなってしまい、つらいところ。
5時36分、燕山荘を出発。
燕山荘から大天井岳への道は歩きやすいコースである。多少のアップダウンはあるが、きつくはない。展望もよく、いいペースで進んでいった。
クサリのついている切通岩を下ってから再び登りになると、まもなく槍ヶ岳方面と常念岳方面の分岐となる。今回は常念岳や蝶ヶ岳から槍・穂高連峰の眺めを楽しむのが目的だったので、左の常念岳への道を行く。大天井岳の東側を巻くように登っていき、7時10分、大天荘に到着。ここから大天井岳の山頂まではわずかなので、山頂へよっていく。
7時16分、大天井岳に到着。今回のコース中の最高点であり、展望は良かった。大天井岳からの眺めを写真に撮って、7時27分、出発。
大天井岳からしばらくは緩やかな道が続く。東天井岳や横通岳はピークを巻いていくので、緩やかで眺めのいいコースである。
横通岳の横を通っていくと、やがて常念乗越へ向けて、急な下りとなっていく。やがて樹林の中に入り、さらに下っていくと、常念小屋のある常念乗越に到着。9時5分だった。
ここで常念小屋に立ち寄って、ちょっと休憩。
9時14分、常念乗越を出発。けっこう急な岩だらけの登りで、ジグザグに登っていく。振り返ると、あっという間に高度を稼いでいるが、常念岳までは400mほど登らなければならないので、先は長い。赤ペンキの印のついた道を確認しながら、ぐんぐんと高度を上げていくが、これがなかなか長くて、簡単には終わらない。かなり登って、ようやく急な登りが終わりかと思ったら、山頂はまだ先だった。しかし傾斜は緩くなって歩きやすくなった。
10時ちょうど、常念岳に到着。
常念岳の山頂も展望がよく、槍・穂高がきれいに見えた。燕岳や大天井岳あたりだと涸沢岳が北穂高岳の後に隠れるような感じになってしまうが、常念岳まで来ると、北穂高岳・涸沢岳・奥穂高岳・前穂高岳とはっきり区別できるようになる。
10時13分、常念岳を出発。
常念岳からの下りも急な岩場の下りで、赤ペンキの印を確認しながら、無理せず確実に下りていった。常念岳の上り下りではペースが鈍ることになった。
下り終わると、なだらかな道になり、やがて樹林の中に入っていった。2592mのピークを越えると、ニッコウキスゲの群落が見られるということだったが、もうニッコウキスゲは終わってしまったようで、かろうじて一輪ほど見かけた程度である。そのかわりマルバダケブキの黄色い花はいっぱい咲いていた。
やがてコースは蝶ヶ岳への登りになり、樹林を抜けて再び開けた道の登りになったところで、トウヤクリンドウが咲いていた。時期的にまだトウヤクリンドウは咲いていないかと思ったら、けっこういっぱい咲いていた。
お腹がぐうぐう言うと思ったら、すでに12時を過ぎていた。朝食が4時半だからお腹も減るわけである。しかし、蝶ヶ岳までもう少しなので、食事は蝶ヶ岳に着いてからということにして、そのまま歩き続けた。
12時21分、蝶槍に到着。ここまで来ると、穂高も正面から見ることができるので、常念岳以上に穂高の眺めは素晴らしい。ただし、時間的にだんだん空気が霞んできているのはやむを得ない。
12時25分、蝶槍を出発。あとはもうなだらかな道をたどっていくだけである。
12時48分、蝶ヶ岳ヒュッテに到着した。
蝶ヶ岳ヒュッテで早速受け付け。一泊二食付きで9000円だった。
1時前に蝶ヶ岳に着いたので、このまま下ってしまえば、夕方までに上高地に下りられるという計算になる。しかし、今回の目的は、蝶ヶ岳からの槍穂の展望にあったのだから、ここで泊まってのんびりしていくわけである。
カメラを持って、蝶ヶ岳の山頂へ行った。ちょっと霞んできてしまったが、槍・穂高連峰はきれいに見えた。やっぱり朝の空気が澄んでいるときに見たいところであるが、山の天気などまったく当てにならないので、とりあえず写真を撮っておいた。
天気のほうは、次第に雲がかかってきてしまう。
夕日は見ることができなかった。穂高の右に日が沈んだようだが、雲は取れなかった。
気になる明日の天気であるが、天気予報では、くもりで昼前から晴れということだった。
(3日目)
山小屋ではどうしても他の人が起きたりして音を立てるので、ときどき目が覚めてしまうが、それでもわりとよく眠れた。目が覚めたときに雨が降っている音が聞こえた。雨が上がってくれるかどうか心配になった。
朝は4時頃から起き始めるが、どうも天気はあまりよくなさそう。雨音は聞こえなかったが、くもっている模様。自分で起きていかなくても、周囲の動向から御来光が見られないことがわかった。
それで、朝食の時間まで寝ていることにした。
朝食は5時半からである。
トイレに行ったついでに窓から外を見ると、雨がけっこう降っていた。
天気予報を見ると、昨日の夜から一転して、天気はよくなかった。晴れのマークが雨のマークに変わってしまっていたのである。これでは山頂で雨が上がるのを待ってもしょうがない。
天気が良ければ、蝶ヶ岳からの槍・穂高の展望を楽しんでからゆっくり下りるつもりだったが、待っても無駄だろうから、あっさりと下りることにした。雨でなければ、高山植物を写真に撮りながらのんびり歩くのもいいと思ったが、雨ではそういうわけにもいかず、さっさと下りていった。
6時10分、レインウェアを着て蝶ヶ岳ヒュッテを出発。
昨日登ってきた人は、今日は常念岳へ登る人が多いのだが、この雨ではちょっとかわいそう。常念岳から来た人は、今日は下るだけだから楽である。昨日、燕山荘から常念岳を越えて一気に蝶ヶ岳まで来て正解だった。朝焼けに染まる穂高を見ることはできなかったが、昨日、一応の目的は達せられたのである。行程についていえば、完全に予定どおりの行程で、雨による変更はなしである。晴れていれば、のんびり下っていくつもりだったが、雨なので、さっさと下りていった。
6時44分、長塀山を通過。
前半はなだらかな下りだが、後半は急な下りとなっていった。この雨の中、登ってくる人にも出会ったが、最初から雨というのもたいへんである。
8時8分、徳沢に到着。ここで登山道は終わりである。徳沢からは上高地自然探勝路を歩いていく。幅広い歩道であるが、雨で水たまりができているため、多少すれ違いで歩きにくいところもあった。時間的には、これから山へ向かう人が多かった。しかし、傘を差したり、ビニールの合羽を着ている人たちもいた。登山者ではなく、上高地に遊びに来た人が散策しているのだった。
9時19分、上高地バスターミナルに到着。