宮ヶ瀬行きのバス乗り場には行列ができていた。ある程度は予想していたが、それ以上に多かった。最後尾に並んだわけだが、しばらくして振り返ると、まだまだ列はのびていた。これだけ多いと、臨時便が出た。定刻便より少し早い臨時便に乗っていった。当然、満員で座れなかったが、大山三峰山へ向かう団体さんが煤ヶ谷ごそっと降りると、一気に空いて座ることができた。仏果山登山口でもそれなりに降りて、残る乗客はかなり少なくなる。三叉路では一人だけ降りた。やはり、三叉路から丹沢山へ登る人は少ないようである。それぐらいだから、宮ヶ瀬から早戸川林道を伝道まで向かい、早戸大滝を見てから丹沢山へ登ろうなんて考えるのは私ぐらいのものかもしれない。
宮ヶ瀬から伝道まではけっこうな距離がある。早戸川橋までは一般車通行禁止の道を行く。ここを歩いているのは野鳥観察や釣り人ぐらいのものである。
早戸川橋を渡ると、早戸川林道をのぼっていく。いつもにぎわっている国際マス釣場の先は、「一般車両通行禁止」となってはいるが、簡易ゲートは設置されていなかったので、上流部へけっこう車が入っていた。魚止橋の手前にあったゲートは撤去されており、魚止橋先の落石も除去されていたから、伝道まで入っている車もあった。
荷物を背負ってちんたら走っていくものだから、宮ヶ瀬バス停から伝道まで1時間20分近くかかった。伝道から先がやっと本番である。
伝道からは登山道になる。伝道にも何人かいたが、伝道まで車で入れるぐらいだから、けっこう大勢の人が早戸大滝を見に来ていたようだ。早戸大滝へ向かう途中でもけっこう人に会った。
途中、きれいな紅葉も見られたが、けっこう時間もかかっていたので、写真は撮らず。
伝道から1時間ほど歩いて、ようやく早戸大滝が見えるところまでたどりつく。周囲の紅葉もちょっと期待していたのだが、絵になるような紅葉ではなくて残念。
滝壺への道は整備されて歩きやすくなっていた。ただし、滝壺に下りる最後の部分で沢を渡るのだが、どうしても片足は水の中に入れなければならない。早戸大滝のすぐ下にもうひとつ滝があって、そのすぐ上を渡るので、濡れた石に足を載せて、滑ったりしたらたいへん。だから、やむなく片足だけ、裸足になって流れを渡る。そして、滝壺付近から見上げて、しばし写真を撮り続けた。
気の済むまで写真を撮った後、滝の上に向かう。そして、早戸大滝の落ち口を見てから稜線目指して登っていく。丹沢三峰方面には2度ほど登ったことがあるので、今回は箒杉沢ノ頭を目指す。お皿にマジックで「大滝新道」と書かれた道である。このコースは、いきなりロープの設置された急登から始まる。道といっても、踏み跡があるといった程度で、無論整備された登山道ではない。ところどころにマーキングテープがついており、ひたすら尾根を登っていくだけだから、登りに使う分には間違う心配はないだろうが、下りの場合は熟知した人以外は勧められない。(早戸大滝から丹沢三峰方面に登っていくコースのほうが明瞭だと思うが、下りの場合はやはり熟知した人以外は勧められない。)
けっこう急な登りだから楽ではない。丹沢三峰の稜線を見て現在の標高を推測する。丹沢三峰は1300m台だから、それより約200m高く登らなければならない。
笹原の斜面になると傾斜もなだらかになってくる。すでにかなり登っており、もうひとがんばりである。笹原の斜面を登っていくと、前方に3人の登山者がいたので驚いた。このコースも案外知られているのだろうか?
大滝落ち口から約1時間で主脈の稜線に出た。箒杉沢ノ頭のあたりである。このあたりの笹原には明瞭な踏み跡はないので、主脈の稜線を歩く一般の登山者には、このコースは知るよしもないだろう。
箒杉沢ノ頭から丹沢山へ向かう。休憩なしで、丹沢山、塔ノ岳と進んでいく。くもっていて展望もよくないし、稜線上の紅葉はすでに終わって、写真に撮るべきものはなかったから、淡々と先へ進む。だいたい予定していた時間だったので、塔ノ岳から鍋割山へ向かう。鍋割山稜も紅葉はほとんど終わりで、落ち葉を踏みしめながら歩いていった。紅葉は終わっても、気持ちの良い道である。
鍋割山到着は3時を過ぎていたので、もうほとんどみんな下山した後だった。山小屋も、もう店じまいの時間のようだから、今日はそのまま下ることにする。
紅葉は次第に標高の低いところに移っており、鍋割山から後沢乗越への登山道で見頃となっていた。
午後3時前後でも案外鍋割山稜を歩く人たちはいるようである。この時間から下山となると、大倉に着く前に日が暮れてしまうことになる。「大丈夫かい?」とちょっとだけ心配になったが、まあ、私も同じ時間に鍋割山稜を歩いているのだから、あまり人のことは言えないのである。