7月19日、梅雨明け。そして3連休が始まった。
夏山シーズン本番を迎え、夜行電車も朝一の特急もすべて満席状態だった。
八王子駅を7時29分発のスーパーあずさ1号は新宿を発車した時点ですでに相当の混雑らしく、自由席券の人は指定席車両の通路やデッキへ・・・と八王子駅構内で放送されていた。
8時37分、韮崎駅に到着すると、急いで改札へ向かう。
そして、改札を出ると、小走りにバスターミナルへ。
下教来石行きバスの発車時刻は8時38分。たった1分でバスに乗り換えるなど無理ではないかと思ったが、なんとか間に合った。
白須バス停で下車。
9時12分、ここからスタート。
まずは登山口の竹宇駒ヶ岳神社を目指すが、一般道を歩いていくのでやたらと暑い。日向山方面との分岐を過ぎると、次第に山らしくなってきて、直射日光を避けられ、少しホッとする。
9時52分、竹宇駒ヶ岳神社に到着。ここが甲斐駒ヶ岳の登山口であるが、尾白川渓谷の入口でもあり、このあたりけっこうにぎわっている。
尾白川渓谷には神蛇滝や不動滝など一度は見に行ってみたい場所だが、駒ヶ岳神社の先の吊橋付近の流れもきれいで、ここで遊んでいる人たちがけっこういた。
吊橋を渡ると、さっそく登りとなり、ジグザグに登っていく。
登山道を登り始めて間もなく、七丈第一小屋の貼り紙があった。食材をヘリで荷揚げできていないため、食事を提供できないということだった。山小屋の食事をあてにしていたので、これはショック。パンとか行動食は持っていっていたから、いちおう今晩と明日の朝食ぐらいはなんとかなるとはいえ、やはりそれだけでは不足気味である。また、このコース上の水場がどの程度あてにできるかわからなかったので、食料も水もできるだけ温存しながら登っていくことにした。
黒戸尾根というと急登の連続と思うかもしれないが、急登ばかりでなく、なだらかなところも当然ある。しかし、やたらと長い登りであることは確かだ。
11時3分、笹ノ平の分岐に到着。ここで横手からの登山道と合流。けっこう登ってきたけれど、ようやく序盤戦が終わったといったところ。
その後も樹林帯の登りが延々と続く。ときおり、他の登山者に会いながら登っていく。
そして、周辺の様子が変わってきたなと思ったところで、岩場のヤセ尾根に出た。刃渡りと呼ばれているところである。しかし、クサリもあるので難所というほどのところでもない。
12時35分、刀利天狗を通過。
地図を見ると、五合目と七丈小屋のところに水場の印があった。五合目の水場は5分ほど下るようだが、水が不足しそうだったので、このあたりで補給しておきたいと思った。
黒戸山の北側を巻いていき、一旦下った鞍部が五合目である。
以前は五合目小屋と屏風小屋があった場所だが、今はもうどちらもなかった。私の地図は古いため、2つの小屋が書かれており、5分下ったところに水場があるとのことだったが、この分だとどうなっているかわからないので、ここで水を補給するのはあきらめた。
五合目は鞍部になったところだが、この先はものすごい急斜面になって目の前に立ちはだかっている。
五合目からはいきなりハシゴの登りである。
黒戸尾根は長い尾根だが、後半の方が傾斜がきつくなるだけでなく、ハシゴやクサリが多くてきついコースである。
食料と水を温存しようとしたため、余計に苦しむことになった。もっとも、時間的には余裕があったので、もう急ぐ必要はなかった。ペースを落として、ゆっくりと七丈第一小屋を目指した。
2時13分、ようやく七丈第一小屋に到着。
七丈第一小屋に入ってさっそく受付。
貼り紙にあったように、食材をヘリで荷揚げできていないため素泊まりのみだった。(寝具付き素泊まりは4500円である。)
とはいえ、カップラーメンなどはあったので、ちょっと安心した。
ちなみに、七丈第一小屋は北沢峠周辺の小屋と違って利用者は極端に少ないので、予約は受け付けていない。食事付きの場合は午後4時までに到着することとなっている。
ここには水場があり、蛇口から湧き水が出ていた。
今日の登りでは水を温存していたため、喉が渇いていた。さっそく、ここで水を飲んだのだが、一気に500ミリリットル飲んでしまった。ちょっとどころか、相当に水分補給できていなかったわけであり、まったくほめられたことではない。黒戸尾根という長〜い登りのルートであることを考えれば、もっと水を多めに用意していくべきだった。
くもっていたが、七丈第一小屋からは地蔵岳のオベリスクが見えた。
甲斐駒ヶ岳の山頂方向を見上げると、やっぱり黒戸尾根はこの先もかなりの急登が続くようである。
七丈第一小屋に泊まったのは16人ぐらいだった。テントの人たちもけっこういたから、合わせて30人ぐらいになっただろうか。
七丈第一小屋では消灯時間は決まっていなかった。電気はずっと通じた状態にしておくので、消す時は電球型の蛍光ランプを回して消すようにということだった。だから、7時頃から寝ていた人たちもいれば、お酒を飲みながら話をしていた人たちもいた。
朝の4時にはみんな起き始めており、ガサガサという以上に音をたてているし、電気もつけられて、否応もなく起きることになる。
外に出てみれば、天気は快晴で、オベリスクの左には富士山も見えた。もともと天気は期待していなかったのだが、これなら山頂からの眺めもよさそうである。
七丈第一小屋から日の出を見るのはちょっとつらいものがあった。テント場まで行けば開けていてよく見えたのかもしれないが、小屋からはちょっと離れていたので、昨日の時点ではそこまで行っておらず、わからなかったのだ。
4時55分、七丈第一小屋を出発。
登山道を少し上っていくと、テント場に出る。開けていて展望の良い場所である。最初からそうと知っていたら、日の出前にここまで来ていたものを・・・
七丈第一小屋から上もクサリやハシゴの設置された箇所が多く、なかなかきついコースだが、次第に周囲の樹林も低くなり、ハイマツ帯に変わり、展望が広がる。
八ヶ岳や槍・穂高など北アルプスの山並もよく見えた。槍・穂高方面はけっこう雪が多そうだった。
5時32分、八合目御来迎場に到着。ここまで来ると、山頂の方もよく見えた。石の鳥居は壊れてしまっていた。
甲斐駒ヶ岳は信仰の山で、登山道のあちらこちらで剣、石仏、石碑などを見かけたが、最もわかりやすく見せてくれるのが、岩の上に剣が立っているところである。このあたりが九合目になるのだろうか。
甲斐駒ヶ岳の東峰には駒ヶ岳神社本社があり、大国主命がまつられていた。
そして、6時24分、甲斐駒ヶ岳の山頂に到着。こちらにも石祠があった。
黒戸尾根は長くてきついコースだが、この山が信仰の山であることがよくわかるコースだった。北沢峠からのコースでは見られないから、やはり黒戸尾根が表参道であると言える。
七丈第一小屋から登れば、北沢峠から登るよりも早く山頂にたどりつくことができるのもいいところである。朝のうち快晴でも、時間とともに雲がわき上がってくるから、山頂からの展望を楽しむには早い時間に登るに限る。
山頂からは、360度の展望で仙丈岳、北岳、間ノ岳、塩見岳、悪沢岳、鳳凰山、富士山、八ヶ岳、北アルプス、中央アルプスなどよく見えた。槍・穂高など、まだけっこう雪が残っているようである。
山頂からの長めを存分に楽しんだ後、下山開始。(6時40分)
黒戸尾根はクサリやハシゴが多いから、ここを下るとなると登り以上に注意が必要になるが、北沢峠に下るなら、特段問題ない。花崗岩のざれた道をジグザグに下っていく。
時間に余裕があるから、摩利支天へ寄り道していく。
摩利支天から見上げる甲斐駒ヶ岳は白くて迫力がある。
摩利支天に寄ったあと、駒津峰まで行って、再び写真を撮る。
相変わらず、眺めが良い。
駒津峰からは、双児山経由で北沢峠へ下っていく。
しばらくは前方に仙丈岳を見ながら下っていく。下っていくうちに、次第に周囲の木々の丈が高くなってきて、展望がきかなくなってくる。
一旦、ちょっと登り返して双児山に到着。
双児山からさらに下っていくと、やがて樹林帯に入り、展望はきかなくなる。ちょっと開けたところで仙丈岳を見たら、けっこう雲が湧き上がってきていた。やはり、展望を楽しむなら朝のうちに限るようである。
9時32分、北沢峠に到着。
この時、広河原行きのバスを待つ人が大勢いたのだが、大汗かいていたし、しばらく休んでいたかったので、次のバスに乗って帰ることにした。
しかし・・・次のバスまで3時間近く待つことになったのだった。
北沢峠〜戸台口間を走る伊那市のバスは、人が集まるとその都度臨時便を出していたのだが、北沢峠〜広河原の南アルプス市のバスは、下山してきた人が多くなっても、いっこうに臨時便を出してくれず、多くの不満の声をよそに長いこと待たされることになった。(それでも定刻便の30分くらい前に臨時便を出してくれた。)
七丈第一小屋で食事の提供がなかったため、1日目は手持ちの食料をあまり食べずに温存し、2日目の朝食も十分には食べなかったのは良くなかった。疲れて、途中で力が出なくなってしまった。やはり十分な食事が必要である。また、水を1リットルしか持っていかなかったので、1日目はちょっと不足気味だった。小屋で補給できるかどうかわからなかったので、1日目に七丈第一小屋へ登るまで500ミリリットルしか飲まず、バテる原因になった。
白須(9:12)→竹宇駒ヶ岳神社(9:52-9:55)→笹ノ平(11:03)→刀利天狗(12:35)→五合目(13:14-13:17)→七丈第一小屋(14:13)
七丈第一小屋(4:55)→八合目御来迎場(5:32)→甲斐駒ヶ岳(6:24-6:40)→摩利支天(7:06-7:10)→駒津峰(7:52-7:59)→双児山(8:28)→北沢峠(9:32)