北アルプス裏銀座縦走1(水晶岳は遠かった)

日付 :2005/08/04(1日目)
コース:高瀬ダム→烏帽子岳→野口五郎岳→水晶岳

 0時40分、八王子駅からムーンライト信州に乗る。平日ということで、混んではおらず、一人で2人分の席を使えたので、体を横にすることもできたが、無論、快適に眠れるわけもない。(快適に眠ってしまって、白馬まで行ってしまっても困るのだが)
 信濃大町から高瀬ダムまではタクシーである。単独でタクシーに乗ると、大金を必要とするが、高瀬ダムへ向かう人は他にもいるはずとの期待どおり、4人でタクシーに乗ることができた。
 タクシーの中で登山届を書き、七倉のゲートのところで提出する。泊まる小屋に○をつけるのだが、歩いてみて、その時の調子次第なので、何も書かなかったら、すかさずチェックが入った。「小屋泊まり?」「どこの小屋に泊まるの?」「野口五郎小屋? 行けたら、ね?」「2日目は?」と続いていく。ちなみに、今回は一応3泊4日で予定を組んでいた。行けたら2泊3日で行ってしまおうと思っていたが、雨に降られる可能性も十分にあるので、余裕をみておいた。しかし、天気さえよければ、3日で十分だろうとは思っていた。
 やがて、高瀬ダムに到着。1人2,100円だった。

 高瀬ダムでタクシーを降りると、外は案外寒かった。Tシャツ一枚でも体は寒くなかったが、風が吹いていて、腕が寒かった。本来なら、出発前に朝食をすませるところだが、ひとまず寒くないところまで歩いていこう、というわけで、5時50分、出発。
 ちなみに、高瀬ダムへはけっこうタクシーが入ってきており、他にもけっこう大勢の登山者がいた。
 まずは、トンネルをくぐるところから始まる。トンネルを抜けても、しばらくは平坦地で、濁沢を渡ると、しばらく沢沿いに歩いていく。
 水場から先が、いよいよ登りとなる。
 ブナ立尾根は北アルプス3大急登の一つだが、合戦尾根よりも少しきつい程度だろうと考えていた。普段丹沢を歩くときよりは抑えていくが、サクサクと歩いていく。高瀬ダムから烏帽子小屋までのコースタイムは6時間となっているが、きっとみんな重たい荷物を背負っているからだろうと思った。私の場合、普段よりは当然荷物は多くなるが、それでも一般の登山者よりは確実に少ない。(いったい、みんな何をそんないっぱい持っていくのだろう?)
 適当な場所で、朝食にすべきだったのだが、けっこう大勢の登山者を追い抜いていったので、登り始めてすぐに休憩していたのでは、追いつかれてしまう。そうすると、また抜き返さなければならず、めんどうだから、しばらくは休憩せずに登っていった。そして、ある程度登ったところで、朝食。おにぎりを1個食べた。本当は3個用意していたのだが、食欲がない。食べるタイミングがちょっと遅かったようだ。無理に食べずに、そのまま登る。ブナ立尾根の登りに関しては、特に何の問題もなく、サクサクと登っていった。
 7時35分、標高2208.5mの三角点を通過。
 そして、8時18分、烏帽子小屋に到着。
 ちょっと休憩した後、烏帽子岳へ向かう。
 前烏帽子岳まで行くと、ちょっとガスっていたが、前方に烏帽子岳が見えた。

烏帽子岳
烏帽子岳

 烏帽子岳のあたりは、雰囲気的には燕岳と似ていて、コマクサも咲いていた。しかし、烏帽子岳の岩峰は急な登りで、クサリ場の登りやトラバースが続く。岩場をよじ登って、山頂に到着。狭い山頂だけど、他に人もいないので、腰を下ろしてちょっと休憩。朝食の続きで、おにぎりをまた1個食べた。(やっぱり、あまり食欲無くて、まだ1個残っている。)
 烏帽子岳からは赤牛岳が大きく見えていた。その左の方には遠く水晶岳も見える。この稜線もけっこう長く、なかなかいいかも・・・と思った。

赤牛岳
赤牛岳、右に薬師岳、左に水晶岳

 山頂から、クサリ場を下っていって、なだらかなところに下りると、目の前に雷鳥が現れる。

ライチョウ
ライチョウ

 その後、烏帽子小屋まで来た道を引き返していった。
 9時52分、烏帽子小屋から野口五郎岳へと向かう。これからが、本格的な稜線歩きである。ブナ立尾根は1000m以上の標高差をひたすら登らなければならないが、烏帽子小屋まで登れば、あとは楽しい稜線歩きだと思っていた。
 あちらこちらで黄色い蝶を見かけた。羽の縁が黒いので高山蝶のミヤマモンキチョウ(長野県の天然記念物)と思われる。羽を開いているところを写真に撮れるとよかったのだが、なかなかうまくはいかないものである。

ミヤマモンキチョウ
ミヤマモンキチョウ

 稜線上では、他の登山者に会う機会は少なかったが、野口五郎岳へ向かう途中、残雪のあるところで、休憩している人たちに会った。この先ずっと水場はないので、ここで水を汲んでいくようにと言われて、水を汲む。(実際、本日後半、この水に助けられることになった。)
 標高2500m以上の稜線とはいえ、日が差していると、けっこう暑い。雲がかかれば、涼しくなっていいと思ったが、実際に野口五郎岳へ向かううちにくもってきた。
 「快適な稜線歩き」と思っていたのだが、案外アップダウンもあるし、けっこう長く、前方右手の水晶岳がなかなか近づいてこない。

水晶岳
水晶岳はまだまだ遠い

 12時00分、野口五郎小屋に到着。(その直前には、雷鳥の親子に遭遇。)
 野口五郎小屋でジュースを買って飲んだ。
 12時18分には野口五郎岳を通過したが、それからが長かった。
 以前、燕岳のほうから見て、なだらかで歩きやすそうなコースと思っていたが、実際にはそれなりにアップダウンがあった。すでにけっこう歩いてきたので、疲れもあった。しかし、きつく感じられた一番の原因は十分な食事をとっていなかったことである。ブナ立尾根はサクサクと登れたが、十分な食事なしではエネルギーが不足していた。
 真砂岳は巻いていくが、このあたりから、石が積み重なった道となり、歩くペースがおちてくる。ペースが落ちると、やたらと長く感じられ、いつまでこんな道が続くんだとうんざりしてくる。悪いことに、なんだか頭もちょっと痛くなって、軽い高山病にかかったような状態。
 最初に十分な食事を取れなかったことから、完全に悪いパターンに陥ってしまった。バテてくると、水も多めにほしくなる。先のことを考えて、飲み干してしまうわけにはいかないので、残りを気にしながら飲んでいく。
 心理的にはかなり長いこと石の積み重なった道を歩いた後、ようやく道も歩きやすくなり、しばらく下っていくと、東沢乗越に到着。ここから、また登りかえさなければならないのだが、バテ気味なため、ゆっくりペースで登っていく。ブナ立尾根のサクサクとしたペースからトボトボ歩くペースに落ち込んだ。それでも、ときどき振り返ってみれば、着実に高度は上がっており、悪いなりにも案外登っているのがわかった。しかし、まだまだ先は長かった。道はしだいに険しくなる。特に危ないというほどではないが、バテ気味の場合は、なんでもないところでも怪我する恐れがあるから、注意だけは怠りなく歩いていくことにする。
 元気を取り戻すにはエネルギーを補給することが不可欠である。あまり食べたいとも思わなかったが、用意していた行動食を一つ食べたら、心なしかちょっと元気が出たような気がした。それで、とにかく水晶小屋目指して歩いていく。
 やがて、上の方に水晶小屋が見えると一安心。
 2時37分、水晶小屋に到着した。

 水晶小屋で受付を済ませた後、カメラを持って、水晶岳へ向かう。(水晶小屋から水晶岳まで片道40分のコース。)だけど、その前に小屋からちょっとだけ下って、写真を撮る。水晶小屋への最後の登り、小屋のすぐ手前できれいな花を見つけていたのだ。ミヤマオダマキだった。
 写真を撮った後、山頂へ向かうが、この道も案外険しい。小屋で受け付けした後、すぐにビールを飲んでしまったのはいけなかった。高い山では平地よりもアルコールがきくのだ。
 山頂はガスがかかっていたので、何を眺めるでもなかったが、疲れていたし、眠たかったので、腰を下ろしてしばらく休憩。
 小屋へ戻る途中、雷鳥3羽と遭遇。今日は3度雷鳥に会った。


稜線上で見かけた花

コマクサ
コマクサ
チングルマ
チングルマ
イワギキョウ
イワギキョウ
ミヤマオダマキ
ミヤマオダマキ

 水晶小屋は北アルプスで一番小さな小屋である。
 夕方、ちょっと寒くなったので、小屋の中に入ることにしたのだが、客室はすし詰め状態だった。夕食は2回に分けたのだが、半分の人たちが食事をしている間、残りの半分の人は部屋の外に出ていたのだった。
 夕食はカレーだった。ここで、ようやくしっかりした食事を取ることができ、元気を取り戻す。
 夕食後、布団が敷かれると、寝る場所が決められた。布団1枚に2.5人ぐらいという状態で、寝返りをうてる状態ではなかった。
 昨日は夜行でろくに寝ておらず、今日は一日歩いてバテバテだというのにまともに休むことができない!
 また、山小屋では、疲れを取るために、簡単なストレッチをすることにしているのだが、こんなすし詰め状態では、ほとんど身動きすらできない。こんな状態で、はたして明日どうなるのか?

 8時消灯だが、消灯後にトイレに行くのは並大抵のことではない。
 部屋中人が寝ていて、ほとんど足の踏み場もない状態だから、外に出ようにも簡単に出られない。(私はかなり奥の方にいたのだった。)客室以外にいる場所はないので、7時頃から、みんな寝ている。きっと、誰かがトイレに出るはずだから、その時にいっしょに出ることにしようと思っていたら、なかなか外に出る人がいないので、どうしようかと思った。しかし、やっぱりトイレに行く人はいたので、その機になんとか外に出ることができた。中は窮屈なので、外に出ると、なんだかホッとする。
 中は人がいっぱいなので、暑苦しい。暑いから布団はかけなかったが、ほとんど体を動かすことができず、寝苦しい夜だった。こんな状態でも、早々に大いびきをかいて寝ている人もいて、こちらは余計に眠れない。
 なんだか酸素が薄いのか息苦しくて、深呼吸を繰り返すが、どうもいまいちだ。
 まったく最悪の夜になってしまった。
 今夜は疲れを取るため、ぐっすり休めると思っていたのに、疲れを取るどころじゃない! 大ピンチ! はたして、明日、槍まで行けるのか?(槍が無理なら双六泊まりでいいのだが)

2日目に進む


高瀬ダム(5:50)→烏帽子小屋(8:18-8:23)→烏帽子岳(9:04-9:19)→烏帽子小屋(9:52)→野口五郎小屋(12:00-12:06)→野口五郎岳(12:18)→水晶小屋(14:37)

丹沢・駆け巡り > 山行記 > 2005/08/04(北アルプス裏銀座縦走1・水晶岳は遠かった)