仙丈岳、間ノ岳、北岳

日付 :2001/07/22-2001/07/24
コース:北沢峠→仙丈岳→三峰岳→間ノ岳→北岳→広河原

 7月20日から22日まで3連休。しかし、この3連休は絶対混むのがわかりきっていたので、休暇を取って、日程をちょっとずらしていくことにした。
 北沢峠は、けっこう遠い。朝一の特急に乗っていっても、北沢峠に着くのはお昼である。
 12時10分、北沢峠からスタート。
 北沢峠から真っ直ぐ登っていくコースもあるが、馬ノ背ヒュッテに行くには、藪沢沿いのコースを登る方が早い。というわけで、長野県側に入って、大平山荘のほうを通っていくことになった。大平山荘の手前には、予約がいっぱいのため、予約のない人は泊まれない旨の表示が出ていた。
 しばらく登っていくと、沢に出た。藪沢の左岸に渡り、沢沿いに登っていった。沢には雪渓が残っていた。
 やがて沢を離れて登っていくと、案外あっさりと馬ノ背ヒュッテに着いた。1時28分だった。

 馬ノ背ヒュッテに到着すると、まず受付。2食付きで7500円だが、混雑しているため、頭と足を互い違いにして寝るということだった。休みをずらしていったとはいえ、1畳に3人といった混みようである。もっとも、昨日や一昨日はもっとすごかったようで、上を向いて寝られるだけましということである。
 中高年の登山ブームで、若い人よりもやはり中高年の人が多かった。白髪のおばあさんといった感じの人までいてびっくり。3000m級の山としては登りやすい山だからだろうか。
 時間が早かったので、馬ノ背のほうに散歩にいった。
 くもっていて、展望はほとんどなし。ときどき、仙丈岳が少し見える程度で、しかも山頂が見えたわけではなかった。
 いろいろ花が咲いていたが、高山植物の知識がないため、名前を知っている花はあまりなかった。クルマユリとかバイケイソウなどは見てすぐわかるが、ここで見かけたバイケイソウはミヤマバイケイソウというらしい。コバイケイソウなら花が白いのだが、ここで見かけた花は緑色でちょっと見た感じでは花が咲いているようには見えないのである。
 クロユリも1輪咲いているのを見つけたが、注意していないと見落としてしまう。シナノキンバイなどはいっぱい咲いていたようである。
 夕食はカレーだった。
 食事のあと、朝食のお弁当とウーロン茶をもらった。
 藪沢カールにある仙丈小屋は昨年できたばかりということで、基本的に素泊まりということだが、レトルトのカレーやカップラーメンなら出してくれるらしい。そうとわかっていれば、そちらに行っただろうに、ノーマークだった。
 8時消灯。
 昨日や一昨日に比べればずっといいとはいうものの、やはり窮屈だった。
 消灯になっても、誰かしらが起きて、トイレに出ていったりするので、全然静かにならなかった。当然、簡単に眠れるわけもなかった。


(2日目)
 4時になったら起きて活動開始と思っていたら、4時で明かりがついた。それで、さっそく出発の準備。朝食はお弁当だが、みそ汁だけは出してくれたので、それだけ飲んでいった。
 午前4時20分、馬ノ背ヒュッテを出発。
 まだ暗いので、ヘッドランプをつけて登っていく。
 登っていくうちに、次第に明るくなっていき、途中、ちょっと開けたところで、写真を撮ろうかと思ったのだが、写真を撮るにはまだ暗くて、三脚なしでは無理だった。そこからは仙丈岳も甲斐駒ヶ岳もよく見えたので、写真を撮るにはいい場所だったのだが、日の出までまだしばらく時間があると勘違いしてしまった。日の出までに山頂か、それが無理でもある程度展望の利く稜線上に出られると思い、そのまま先へ進んだ。日の出は5時過ぎと思ったのだが、夏至からまだ1か月なので、当然4時台だったのである。
 そのため、藪沢カールの下にある仙丈小屋のあたりで、日の出の時間を迎えることになった。仙丈小屋からは残念ながら日の出を見ることができなかった。
 もっと早く出発するか、先ほどの開けたところで待つべきだったのである。

 仙丈小屋の前から朝日を受け始めた仙丈岳を写真に撮った。シャッター速度が遅くなるので、指導標によりかかったりして、できるだけブレないようにした。

仙丈岳
仙丈岳

 それから山頂へと向かったが、仙丈小屋から山頂まではたいした距離ではなく、もう少し早く出ていれば、御来光が見えるところまで登ることができていたはずである。
 5時11分、仙丈岳の山頂に到着。
 山頂からは甲斐駒ヶ岳や八ヶ岳、西には中央アルプスの山並みが見えた。北岳の左には富士山が見えたがちょっと霞んでいた。
 仙丈岳の山頂で朝食のお弁当を食べた。空腹の状態で登ってきたため、たいした登りではなかったが、ちょっときつかった。昨日はたいして登っていないので、疲れが出ることもないだろうと思っていたのだが、予想に反して疲れが出てしまったかと思った。この先の長い行程を考えると、疲れが出ているならちょっと苦しいところである。
 疲れた状態だったので、お弁当を食べるのもあまり食欲が進まなかった。お弁当を食べてから出発すべきだったのだろう。しかし、食べないことにはこの先どうしようもないので、とにかく食べた。ちなみに、鮭のお弁当で、質素な内容だった。あまり食は進まなかったものの、とにかくお弁当を食べると、元気が出てきた。
 5時36分、仙丈岳を出発。仙丈岳に登った人のほとんどが北沢峠に下りていくのだが、私はここから仙塩尾根をたどっていくことにした。出発しようとしたところで、おばさんに仙塩尾根がこちらかと尋ねられた。私が仙塩尾根を行くと知ると、いっしょについてくることになった。

 大仙丈岳までおばさんといっしょに歩いていった。一人で来ていたおばさんだが、けっこう山は歩いているようである。私よりはよほどいろいろな山へ行っていそうである。高山植物も私よりもよく知っていて、教えてもらった。おばさんは両俣小屋に下りて、それから北岳肩ノ小屋を目指すということだった。まさか、今日肩ノ小屋まで行くつもりではないだろうとは思ったが、一日で肩ノ小屋まで行くのは無理だから、両俣小屋に泊まった方がいいと言っておいた。

クルマユリ他
仙塩尾根にて

 大仙丈岳のあたりはまだ森林限界を超えており、これから向かう稜線がはっきり見て取れる。特にわかりにくそうなところもなく、私はロング・コースなので、大仙丈岳からは一人で先に歩いていくことになった。仙塩尾根を歩いている人は少なかったが、それでも全くいないわけではなく、ときどき人に会った。
 7時19分、伊那荒倉岳に到着。ちょっと休憩し、7時23分、出発。
 少し下っていくと、高望池に到着。池は涸れているが、長野県側に少し下りていくと水場があるのでよっていくことにした。この先はもう水場はないのである。水場で湧き水を飲み、ペットボトルにも補給していった。
 野呂川越までずっと下りというわけではなく、多少のアップダウンはあったが、登りが長く続くようなことはないので、特にきついことはなかった。
 8時38分、野呂川越に到着。ここから先は登りになるので、パンを1つ食べていった。8時47分、野呂川越を出発。
 野呂川越の先、少し登っていくが、わりとなだらかな道が続いた。樹林の中なので、ところどころで展望が開けたほかは、ほとんど展望は利かないが、直射日光を受けないので、暑くはなかった。
 しばらくして、ちょっと開けたところから、これから先の稜線を見ると、けっこう急な登りが待っているのがわかった。けっこう急な登りのピークが見えたが、それは三峰岳ではなかった。三峰岳なら塩見岳のほうへ続く稜線が見えるはずなのだが、そこから見えたピークは登りの途中にある小ピークの1つに過ぎなかったのである。ちょっとした岩場になっていて、針金がつけられたところを登っていった。
 ピークの上に立つと展望が開けて、仙丈岳からたどってきた稜線が見えたが、まだまだ先は長い。1つ越えてもその先まだいくつも急な登りが待っていた。そうした急な登りの上はちょっと開けていて、展望が利いた。
 しばらくして、ようやく三峰岳の岩頭が見えてきた。しかし、三峰岳を目前にして、いったいどうやって登るのかとちょっと心配になった。近くまで行ってみると、左側に巻き道があって、進んでいくと、間ノ岳へ行く道と塩見岳への道の分岐に出た。ここで塩見岳への道を登っていくと、三峰岳の山頂である。
 10時57分、三峰岳に到着。
 仙丈岳からたどってきた長い稜線を振り返ると、よくもこれだけの距離を歩いてきたものだと思った。三峰岳からの眺めは良くて、南のほうには塩見岳やその向こうには悪沢岳などの山が見えた。もし北岳山荘まで行く余裕がなかったら、熊ノ平小屋に下りていこうと思っていたのだが、その熊ノ平小屋は三峰岳からはわりと近くに見えていた。しかし、今回、特に疲れもなかったので、問題なく北岳山荘へ向かうことにする。北岳から農鳥岳へと続く白峰三山ももちろん間近に見えた。間ノ岳はさらに登っていかなければならないが、時間は十分に余裕があるので、一安心である。のんびり歩いていっても、全然余裕である。

仙丈岳
仙塩尾根から仙丈岳を振り返る
塩見岳ほか
塩見岳方面の眺め(三峰岳)

 11時3分、三峰岳を出発。
 間ノ岳へ向かってガレ場を登っていく。森林限界を超えているため、もろに日差しを受けるので、標高3000mとはいえ暑かった。
 仙丈岳からたどってきた稜線では登山者の数は少なかったが、やがて大勢の登山者がいる間ノ岳の山頂が見えてきた。

 11時43分、間ノ岳に到着。12時前に間ノ岳に着き、あとはもう北岳山荘までほとんど登りもないから楽である。十分な余裕を持って北岳山荘に着けるはずである。
 山頂にいた人からは塩見のほうから来たのかと聞かれた。やはり仙丈岳から来る人は少ないのだろう。
 仙丈岳からたどってきた稜線を振り返ってみて、よくもこれだけの距離をあるいてきたものだと感慨もひとしお。間ノ岳からの展望も抜群だったが、東側からはガスが上がってきていた。そのため農鳥岳の左側は完全に真っ白だった。しかし、北岳や仙丈岳、南には塩見岳や悪沢岳などよく見えた。間ノ岳の山頂近くには雪が残っていた。

北岳と甲斐駒ヶ岳
北岳と甲斐駒ヶ岳

 間ノ岳の山頂でパンを食べ、写真を撮ったりしてしばらく休憩した後、12時3分、北岳山荘へ向けて出発。
 登りはもう終わったので、あとは楽なものである。特に急ぐ必要もないので、のんびりと歩いていく。

チシマギキョウ
チシマギキョウ

 中白根山まで行くと、目の前に堂々として迫力のある北岳が見え、その手前には北岳山荘が見えた。あとは山荘へ向けて下っていくだけ。

北岳
北岳

 1時2分、北岳山荘に到着した。
 北岳山荘からは目の前に北岳が大きい。仙丈岳は雲がかかり始めていた。
 南アルプスの山小屋は北アルプスと違ってあまり大規模な小屋はないが、北岳山荘は南アルプスでは最大規模の山小屋で、けっこう大きな山小屋だった。キャンプもできるので、なおさら大きい。
 北岳山荘は予約の必要がないので、当日受付である。2食付きで7700円。さすがに平日ですいているのか、布団は1人1枚だった。私の入った「農鳥岳」という部屋は7人部屋だった。大部屋だと誰かしらが起きたりして音を立ててうるさいのだが、人数が少ない部屋でよかった。水1リットル無料券というのもくれた。宿泊者には1リットル無料でもらえるのだが、宿泊しない場合でも1リットル100円で汲むことができる。
 連休をはずしてきて正解だった。とはいうものの、時間とともに登山者がやってきて、遅くやってきた人は屋根裏部屋のところに入れられていた。私のいた「農鳥岳」の部屋にも天井の上に何人かやってきたが、下にいる我々と違って、かがまないと頭がぶつかってしまうようなところであり、これで同じ料金とはちょっとかわいそうだった。
 夕食まで時間はたっぷりあるので、付近を散歩したりして過ごした。
 北岳山荘の夕食は昨日のものよりずっと良かった。ご飯も自由にお代わりできた。
 午後6時50分、テレビの天気予報を見た。明日も天気は良さそうだが、下ではとんでもない暑さになっている。今日の最高気温は甲府で38度だった。明日も猛暑が続きそうで、山を下りたくなくなるような暑さである。
 8時、消灯。
 今日は本当に充実した一日だった。


(3日目)
 朝食は4時からということで、4時には起きて、朝食の準備ができるのを待った。
 4時過ぎ、食堂で朝食を食べた。登山は体力がいるので十分な食事が必要である。それで、やっぱりご飯をお代わりした。食事の際、なぜか食堂の窓が開けられた。朝は半袖のTシャツではちょっと寒いぐらいなのだが、外はきれいに晴れており、富士山がきれいに見えていた。昨日はちょっと霞んでいたが、今日は昨日以上にいい天気である。

 食事のあと、日の出を見ようとカメラを持って外へ出ていった。ところが、北岳山荘付近からだと八本歯ノ頭が邪魔になってしまうということがわかった。御来光を見るなら、朝食の時間を待たずに北岳に登らなければならなかったようなので、これはどうしようもない。しかし、富士山はきれいに見えており、しっかりと写真に撮ることができた。

夜明け前の富士山
夜明け前の富士山(北岳山荘付近から)

 500ミリリットルのペットボトル2本のうち1本はまるまる残っていたので、1本だけ水を補給していった。
 今日は北岳に登って、あとは下りるだけなので、急ぐ必要はない。あわてずに出発することにする。

 5時20分、北岳山荘を出発。
 北岳へ向けて登っていくと、前を登っていたおばさんに声をかけられて、びっくり。昨日、仙丈岳で会ったおばさんである。てっきり両俣小屋に下りたと思っていたので、いったいどうやってここまで来たのか、一瞬ピンと来なかった。
 昨日、大仙丈岳で別れたものの、両俣小屋だと午前中のわりと早い時間に着くことが考えられた。それで、両俣小屋に泊まらずに北岳肩ノ小屋を目指しはしないかと若干心配しないでもなかったのだが、野呂川越で両俣小屋に下りずに、私のたどったコースをそのままついてきたのだった。10時間以上かかって、北岳山荘にたどり着いたのは3時過ぎだったということだが、還暦のおばさんがよくもこれだけ歩けたものである。
 普通は、北沢峠に2泊して甲斐駒ヶ岳と仙丈岳に登る人が多いので、仙丈岳から間ノ岳、北岳というコースをたどる人はほとんどいないだろう。両俣小屋に下りないで、仙丈岳から一気に北岳山荘まで行くのは、かなり長い行程になるので、一般的にはかなりきついはずである。したがってこんなコースを歩くのは私ぐらいのものだろうと思っていたのだが、なんと還暦のおばさんが全く同じコースを歩いてしまったのであった。
 5時59分、北岳山頂に到着。
 天気は快晴で、展望は抜群。甲斐駒ヶ岳、仙丈岳、間ノ岳、富士山、鳳凰三山、八ヶ岳、中央アルプス、そして北アルプスも見えていたようである。
 昨日の仙丈岳から三峰岳、間ノ岳と経由して北岳山荘へとたどる長いコースを歩いた充実感と今日のこの北岳からのすばらしい展望にもう十分に満足できた。
 今日は時間的に全く余裕があるので、山頂でしばらく展望を楽しんだ。

甲斐駒ヶ岳
甲斐駒ヶ岳(北岳から)
間ノ岳
間ノ岳

 6時30分、北岳山頂を出発。写真を撮りながら下っていく。
 7時20分、小太郎山方面と二俣、白根御池小屋方面の分岐に到着。ここで展望のよかった小太郎尾根とは別れて、右俣コースを二俣へ下りていく。大樺沢に出るか、草スベリを行くかでちょっと迷ったのだが、二俣へ大樺沢の二俣へ下りていくことにした。右俣コースを下っていくと、北岳バットレスも見えてきた。お花畑もあって、なかなか。
 8時24分、二俣に到着。二俣付近は雪渓になっており、雪渓を前景とした北岳の眺めはなかなかのもの。
 8時33分、二俣を出発。雪渓を歩いている人たちもいるが、アイゼンなしで、しかも下りでは滑りやすいので、登山道を歩いていった。
 やがて、雪渓も消えて、普通の沢沿いのコースとなった。沢沿いということで、登山道を水が流れているところもけっこうあったが、今日はやたらと暑くて、水が流れている程度では全く涼しくはなかった。
 登山道は崩壊地を避けて、いったん右岸に渡り、その後また左岸に渡り返した。あとはひたすら下っていくだけだが、これがけっこう長かった。標高が下がっていくので、暑かった。
 10時1分、白根御池小屋からの道と合流。さらに下っていって、10時19分、広河原山荘に到着。広河原山荘には自動販売機が設置されていたので、ビールを買って飲んだ。
 そして、のんびりとバス停へ歩いていった。吊り橋を渡って、振り返ると、北岳が見えた。

 今日も晴れて、暑かったので、途中からタオルを首に巻いていったが、腕などかなり日焼けした。
 高山植物もいっぱい咲いていたが、写真のほうは結局あまり撮れずじまい。登山道を歩いていて、きれいな花が咲いているのを見つけても、結局その場はそのまま通過してしまい後悔してしまうこともあった。岩場の登山道で、他の登山者がやって来るので、写真を撮るなら、いったん追い抜いてもらわなければならないのである。しかし、当然、その後また追いつくと、道をあけてもらうことになるので、どこか他の場所で見つけたらと思って通過してしまい、結局、その後、その花は見かけなかったというパターンである。
 クロユリも初日の馬ノ背で見かけただけで、写真を撮り損なった。

 1時過ぎ、甲府に到着。やたらと暑かった。
 夜、テレビを見て知ったのだが、なんと今日、甲府の最高気温は39.7度にまで上がっていたのだった。テレビを見てびっくりしたが、どうりで暑かったわけである。

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