「蜜蜂と遠雷」

蜜蜂と遠雷第156回直木賞受賞作。
直木賞の候補となっていた時点で、読者の評判もよかったので、気にかけていた作品だった。
恩田さんの本は何冊か読んだことがあるが、特別好きな作家というわけでもなかった。ほんの数冊読んだという程度だった。しかし、読み始めて、これは期待以上の作品だと思った。
国際的なピアノコンクールに参加する若き天才たちを描いた作品。
普通は読み終わってから感想を書くものだが、今回はまだ読んでいる途中であり、ワクワクしながら読み進めているところだ。
ただ「いい」と書いたって、何がいいのかわかるわけがない。しかし、今のところ、どう表現したらいいのかわからない。とにかく、これはいいと薦めたくて、まだ読み終えていないにもかかわらず書いてしまった。


(追記)
ついに読み終えてしまった。
読み終えてしまうことに寂しさを感じた。もっと、この世界に浸っていたかった。

ピアノは弾けないし、クラシック音楽に詳しくもない。そして、小説では文字を追っていくだけなのだが、それにもかかわらず若き天才たちの演奏にワクワクさせられっぱなしだった。


「ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女」

ミレニアム 4 蜘蛛の巣を払う女 (上)世界的ベストセラーの続編だが、「ミレニアム」3部作の作者は死去しており、この第4部はまったく別の作家による続編である。スティーグ・ラーソンが執筆途中だったという第4部の内容は反映されていない、まったくのオリジナル作品。
ということで、はたしてこの第4部は3部作同様に楽しむことができるのか心配もあった。
が、読み始めると、あっさりと引き込まれて、ページをめくる手が止まらなくなった。
まったく違和感なく読めた。予備知識がなければ、別の作家による作品とは気がつかない可能性も大である。
これなら大方の読者には歓迎されるのだろう。

さて、スティーグ・ラーソンは3部作で一区切りをつけていたが、それでも謎の部分があって、それが第4部以降の展開の鍵となりそうだったが・・・
この第4部の下巻ではその部分に触れられていく。
リスベットの過去が明かされ、宿敵が現れる・・・

「ミレニアム」は、今後、2017年に第5部、2019年に第6部の刊行が予定されているということで、待ち遠しい。


シミだらけの本

今月はKADOKAWAで半額セールを行っている。4回に分けて半額セールを行うようで、1ヶ月で約2万3千冊の本が半額セールの対象となるようだ。
紙の本と違って、電子書籍では値引き販売を行うことも少なくない。値引きではなくポイント還元ならもっと多い。ポイント還元も実質値引きと変わらないから、ありがたい。
特定の本についてポイント還元という場合もあるし、本を特定せずに購入金額に応じて還元したり、まあ、手を変え品を変えて、セールやらポイント還元サービスを行っている。

セールやポイント還元の対象となるもののなかで気になる本があれば、こういう機会に買うことにする。セールやポイント還元をうまく利用して買っていけば、けっこうお金を節約できることになる。
もちろん、ポイント還元などなくても、読みたい本は買ってしまうわけで、安い本だけ選んで買っているわけではないのだが。

電子書籍を販売しているサイトもいろいろあるが、生き残るためにはこうしたサービスを行ってユーザーを確保しなければならないのだろう。

ところで、今年の4月に引っ越しのため、紙の本を箱詰めすることになったのだが・・・古い本の多くがシミだらけになっているのを発見してショックを受けた。
本棚に入れたまま、ほったらかしていたせいだろうが、愛着のある本がシミだらけというのは悲しいものである。

ハードカバーの本はまだいいが、紙質の悪い文庫や新書などは惨憺たる状態だった。
文庫や新書など所詮はその程度のもので、本物の本と呼べるのはハードカバーの本だけなのかもしれない。とはいえ、文庫や新書でも愛着のある本は捨てがたいし、今や絶版状態とあっては買いなおすこともできない。

電子書籍の場合は、Amazonが一人勝ちして、他のフォーマットが消滅してしまうのではないかという心配もあるが、シミだらけになる心配がないのはよいことである。
将来的にソニーが電子書籍から撤退したとしても、手元にある電子書籍リーダーが物理的に壊れない限りは今ある電子書籍は読み続けることができる。
しかし、今後も淘汰されることなく、普及・定着していってほしいものである。


「原発ホワイトアウト」

原発ホワイトアウト (講談社文庫)普通の小説だったら、不愉快に思うだけで終わったかもしれないが、これが現役キャリア官僚が匿名で書いた告発小説となると受け取り方もまったく変わる。
東日本大震災を期に脱原発へと向かいかけたのが、政権交代によってあっさりと原発再稼働へと転換した。この小説を読むと、そうなった裏が見えてくるようである。

自らの利権のために原発再稼働へ向けてひた走る政官財が生々しく描かれている。
そして、原発再稼働に反対の知事を陥れて排除していくのも、現実的で空恐ろしい。


「スロウハイツの神様」

スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)スロウハイツの神様(下) (講談社文庫)辻村深月さんの本の中で一番好きな本を久しぶりに再読。
あ~、やっぱりこの本はいいな~

チヨダ・コーキの小説の狂信的な読者が起こした事件がもとで、マスコミから糾弾され、自らも責任を感じて休筆したチヨダ・コーキ。
その一方で、悲惨な境遇にありながら、チヨダ・コーキの小説を読むことだけを楽しみに生きてきた少女がいた。匿名少女の投書が新聞に掲載されたことによりチヨダ・コーキは救われて、再起を果たした。
そして・・・

スロウハイツは若きクリエーター(とクリエーターの卵)が疑似家族を形成して共同生活を送るアパートである。
オーナーの赤羽環は若き売れっ子の脚本家。住人は映画や漫画、絵画でプロを目指す友人たち。そして、中高生に圧倒的な人気を誇る作家チヨダ・コーキもここに住んでいる。

物語はスロウハイツに加々美莉々亜が入居することによって動き始める。彼女はかつて事件が起きた時に新聞に投書した匿名少女らしいのだ・・・

あらすじを書くことは控えるが、赤羽環とチヨダ・コーキが物語の軸となる。
非常に気が強くて、決して弱味を見せることのない赤羽環は容赦なくきついことも言うけれど、言葉とは裏腹に思い遣りが深く、実はすごくやさしい女性でもある。
赤羽環が決して人には見せようとしない本当の想いが明らかになる時、涙ぐましくなる。
そして、環に対するチヨダ・コーキほか住人たちの想いも暖かで・・・
なんて素敵な小説なんだろう。
(具体的に書いてしまうとネタバレになってしまうし、ネタバレせずにこの小説の素晴らしさを書くなんてむずかしい。)

きっと、また、読み返すことになるだろう。